改訂新版 世界大百科事典 「葉上苔」の意味・わかりやすい解説
葉上苔 (ようじょうごけ)
bryophyte
epiphyllous
シダや常緑樹などの生葉上に生育するコケの総称。一部の葉上苔で,仮根が葉の組織内に入り水や養分を吸収することが知られているが,一般には単に葉の表面に付着しているもので両者の間に栄養的なつながりはない。温暖で湿潤な地域に発達し,熱帯では多種に分化しているが,日本の南部でも低地の谷間などにかなり多い。葉上苔には蘚(せん)類やツノゴケ類は少なく,大部分が苔(たい)類で,特にクサリゴケ科のヒメクサリゴケ属Cololejeunea,カビゴケ属Leptolejeunea,ケビラゴケ科のケビラゴケ属Radulaなどに多い。これらの葉上苔は一般に,植物体が微小である,生殖可能になるまでの期間が短い,葉の一部が水を蓄える袋状の構造をつくる,平滑な表面に付着するための吸着器官が発達している,平面で安定しやすい円盤状の無性芽をつくるなど,葉上という特殊な環境に対する適応を遂げている。
執筆者:北川 尚史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報