葉上苔(読み)ようじょうごけ(その他表記)bryophyte
epiphyllous

改訂新版 世界大百科事典 「葉上苔」の意味・わかりやすい解説

葉上苔 (ようじょうごけ)
bryophyte
epiphyllous

シダ常緑樹などの生葉上に生育するコケ総称。一部の葉上苔で,仮根が葉の組織内に入り水や養分を吸収することが知られているが,一般には単に葉の表面に付着しているもので両者の間に栄養的なつながりはない。温暖で湿潤な地域に発達し,熱帯では多種に分化しているが,日本の南部でも低地谷間などにかなり多い。葉上苔には蘚(せん)類やツノゴケ類は少なく,大部分が苔(たい)類で,特にクサリゴケ科のヒメクサリゴケ属Cololejeunea,カビゴケ属Leptolejeunea,ケビラゴケ科のケビラゴケ属Radulaなどに多い。これらの葉上苔は一般に,植物体が微小である,生殖可能になるまでの期間が短い,葉の一部が水を蓄える袋状の構造をつくる,平滑な表面に付着するための吸着器官が発達している,平面で安定しやすい円盤状の無性芽をつくるなど,葉上という特殊な環境に対する適応を遂げている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の葉上苔の言及

【クサリゴケ】より

…苔類の科の中で属および種の数が最大で,世界では約80属1500種が知られ,日本では約25属100種が記録されている。一般に樹幹に着生するが,ヒメクサリゴケ属Cololejeuneaやカビゴケ属Leptolejeuneaのように,シダや常緑樹の葉上に生育する葉上苔(ようじようごけ)もある。植物体は一般にごく小さく,基物に密着してはう。…

【コケ植物(苔植物)】より

…ヒカリゴケは深山の洞穴や大木のうろなど光のごく弱い場所に生える。クサリゴケ科の小さな種は,しばしば常緑樹やシダの葉上に生育するので,葉上苔(ようじようごけ)と呼ばれる。阿寒湖と屈斜路湖のヤナギゴケ,猪苗代湖のヒロハノススキゴケは湖底に生育し,波の運動によって回転してまり状となるのでマリゴケと呼ばれる。…

※「葉上苔」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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