改訂新版 世界大百科事典 「クロバナロウバイ」の意味・わかりやすい解説
クロバナロウバイ
Carolina allspice
Calycanthus floridus L.
高さ2~3mになるロウバイ科の落葉低木で,花木として庭園に栽植され,また切花にもされる。新枝や葉柄は有毛,葉の裏面も短軟毛を密生する。葉は広卵形から長楕円形,長さ5~12cm。花は前年枝の葉腋(ようえき)から生じる新枝につき,径4~6cmほど,名前のように暗紅紫色で,強い芳香がある。花期は5~7月。樹皮にも芳香があり,インディアンは香辛料として使用していたという。アメリカロウバイC.fertilis Walt.はクロバナロウバイに似るが花は赤褐色で芳香がほとんどなく,葉の裏は無毛である。どちらも北アメリカ南東部の原産で,日本へは明治中期から大正年間に導入された。繁殖は実生または株分けにより,肥えた日当りのよい土地が適している。庭園樹とされるが,アルカロイドのカリカンチンcalycanthineを含み,有毒である。
クロバナロウバイ属Calycanthusは花弁と萼片が区別できない花をつけ,北アメリカ特産で5種ほどが知られる。
執筆者:堀田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報