化学辞典 第2版 「ケクレ構造」の解説
ケクレ構造
ケクレコウゾウ
Kekulé's structure
ベンゼンの構造式として標準的に使用されている表記(ⅠおよびⅡ).1865年にF.A. Kekulé(ケクレ)が提唱した.この表記によれば,ベンゼン分子は,3個の二重結合と3個の単結合が交互に結合したものであり,変形した六角形の構造をとるようにみえる.しかし,実際には,ベンゼンの6個の炭素-炭素結合はすべて同等で,二重結合と単結合の中間的な性格をもち,ベンゼン分子の構造は正六角形である.この矛盾は,実際のベンゼン分子は,二つの同等なケクレ構造ⅠおよびⅡを重ね合わせた構造(共鳴混成体)であると考えれば説明できる.この問題を回避する表現として,構造式Ⅲが用いられることもあるが,反応機構のためにはケクレ構造Ⅰ,Ⅱのほうが適しているので,多く使われている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報