化学辞典 第2版 「反応機構」の解説
反応機構
ハンノウキコウ
reaction mechanism
化学反応式で表される化学変化に含まれる素反応の組合せ(反応経路)および各素反応の詳細をいう.たとえば,
H2 + Br2 → 2HBr
で表される化学変化は,
Br2 2Br
Br + H2 → HBr + H
H+2Br2 → HBr + Br
H + HBr → H2 + Br
などの一連の素反応から成り立っている.さらに全反応速度に対する個々の素反応の関与や律速段階,およびそれらの外的条件による変化が明らかであるとき,それを反応機構という.反応経路の決定には,各素反応中に含まれる反応中間体を明らかにすることが必要であり,そのために反応速度論,各種の分光学的手法や同位体効果などが用いられる.律速段階があれば,それを与える素反応の指定と外部条件(反応系の圧力,温度,組成など)に対するそれらの依存性を知る必要がある.実際に全反応機構が明らかにされている例は,少数の均一系反応以外にはきわめて少ない.反応中間体の性質に着目して,ラジカル機構,カルベニウムイオン機構,カルベン機構,イリド機構などという呼び方がある.気相単分子反応におけるリンデマン機構,固体触媒反応におけるラングミュア-ヒンシェルウッド機構,リディール機構,酵素反応におけるミカエリス-メンテン機構などは著名である.有機化学反応における求核反応,親電子反応,SN1型反応,SN2型反応などの用語は,素反応の起こる機構を表すものである.電子移動反応における内圏機構,外圏機構は,2種類の金属錯体間の電子移動における配位子の関与の仕方による分類である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報