改訂新版 世界大百科事典 「コブカニダマシ」の意味・わかりやすい解説
コブカニダマシ
Pachycheles stevensii
カニダマシ科の甲殻類。カニの形をしているが,ヤドカリの仲間である。ウラジオストクから記録されているほか,北海道南部から九州までの太平洋岸各地に見られる。岩礁の石の下にすむが,同じような場所にすむイソカニダマシほど多くはない。甲幅1.5cm。体はやや厚みがあり,紫色がかった茶色をしている。甲は長さと幅がほぼ同じであるが,額が三角形に突き出しているため,やや縦長に見える。甲面は滑らか。はさみ脚は腕節,掌部とも幅広くて体に不つりあいなほど大きいが,右側がやや大きい。一面に小さな粒で覆われ,それらが集まってでこぼこしているほか,2~3本の縦溝がある。歩脚は幅広くて比較的短く,前縁に軟らかい毛の縁取りがある。抱卵期は7~9月であるが,産卵やその他の生態はよくわかっていない。
執筆者:武田 正倫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報