一面(読み)いちめん

精選版 日本国語大辞典 「一面」の意味・読み・例文・類語

いち‐めん【一面】

〘名〙
① (形動) 一つの物事の全部、総体。
(イ) ある場所全体。そのあたり一帯
※金刀比羅本保元(1220頃か)上「基盛三百余騎を一面(イチメン)にたてて、すこしすすみ」
(ロ) そこにいる全員。また、それがそろっていっせいであるさま。
平家(13C前)一一「主従三人〈略〉太刀をぬいて一面にうてかかる」
一方の側。片方の面。
(イ) 物や場所などの一つの側。
今昔(1120頃か)三「上の牙を取て別に一面に置て阿闍世王に与ふ」 〔法華経‐序品〕
(ロ) 物事のある側面観点半面。副詞的にも用いる。また、中国の近世語の影響から「一面…一面…」の形で、「…しながら…する」の意で用いられることもある。
四河入海(17C前)一四「故事は一面かり用るまでぞ」
※二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉上「お銀は始終顔を下げて、一面(メン)は聞き、一面(メン)分別
灰燼(1911‐12)〈森鴎外〉一四「あの議論は一面の真理を持ってゐるには相違ないが」 〔史記‐留侯世家〕
③ はじめて会うこと。また、一度だけ会うこと。
※懐風藻(751)初秋於長屋王宅宴新羅客〈調古麻呂〉「一面金蘭席、三秋風月時」
※別れ霜(1892)〈樋口一葉〉一〇「我に対して一面(イチメン)の識なく一語の交りなき若(し)かも婦人が所用とは何事」 〔世説新語賢媛
④ 鏡、硯、琴、琵琶、また、碁、将棋の盤や駒一組など、主に平らなものや面を持ったものの一つ。
吾妻鏡‐貞応三年(1224)四月二八日「御硯一面〈蒔鶴〉」
浄瑠璃・八百屋お七(1731頃か)上「木仏の大黒と布袋屋歌留多一めんじゃが」
⑤ 新聞の第一ページ。主に政治に関する重要な事件や問題を掲載する。
青年(1910‐11)〈森鴎外〉二「東京新聞を拡げて、一面の小説を読む」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「一面」の意味・読み・例文・類語

いち‐めん【一面】

物体の一つの面。
物事のある一つの側面。ある観点。副詞的にも用いる。「一面の真理」「勤勉である一面、多趣味の持ち主」「こわそうにみえて、一面とてもやさしい」
辺り一帯。ある場所全体。「一面の花畑」「火花があたり一面に飛び散る」
初めて会うこと。一度の面会。
「我に対して―の識なく一語の交りなき」〈一葉・別れ霜〉
新聞の第1ページ。フロント。「夕刊の一面を飾る記事」
鏡・すずり・碁盤・太鼓・琴など、面をもつものの一つ。→めん
[類語](1一方片側片面半面反面他面片方片一方片割れ他方側面片端一端一半一環片鱗一面的一方的サイド/(3一帯一円全域地域

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

普及版 字通 「一面」の読み・字形・画数・意味

【一面】いちめん

一方面。

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