ウラジオストク(読み)うらじおすとく(英語表記)Владивосток/Vladivostok

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウラジオストク」の意味・わかりやすい解説

ウラジオストク
うらじおすとく
Владивосток/Vladivostok

ロシア連邦東部、沿海地方の行政中心都市。人口61万3100(1999)、59万8927(2012推計)で「ソ連極東」とよばれていた地域の第二の大都市。シベリア鉄道幹線の終点で、太平洋岸におけるロシアの重要港。ピョートル大帝湾に北から突出するムラビヨフ・アムールスキー半島の南端にあり、半島の先端に深く湾入する「金角湾」沿岸の丘陵地とそれに続く同半島の西海岸(アムール湾の東岸)に位置する。シベリア鉄道と太平洋諸航路との連絡地で、北極海航路の東方の終点であり、空港がある。港は冬には結氷するが、砕氷船の援助で厳冬にも使用でき、ロシア海軍の太平洋艦隊および空軍の重要な基地がある。漁業やカニ漁の船団根拠地ともなっている。機械製造(造船、船舶修理、漁業・鉱山用機械、コンベヤー装置、ポンプ、電機)、建設資材(鉄筋コンクリート構造物、組立式建築大型パネル)、食料品(魚類と精肉の両コンビナート、乳業、菓子)などの工業がある。

 国立極東総合大学、単科諸大学(極東工業、漁業食品工業、芸術教育、医科商科、海運技師)、科学アカデミーの極東支部、太平洋漁業海洋学研究所、地理学会沿海地方支部、郷土博物館、文化会館、劇場、テレビジョン放送局などがあって、学術研究、教育、文化の中心地でもある。ムラビヨフ半島の西海岸は極東の大保養地で、多数の憩いの家やサナトリウム、臨海公園、海水浴場などがある。新潟、秋田、函館(はこだて)各市と姉妹都市となっている。長く軍港として外国人立入り禁止となっていたが、1992年1月1日開放され、現在は新潟との間に定期航空路が通じている。1996年4月には極東大学内に「日本センター」が開設された。

[三上正利・外川継男]

歴史

1860年に建設され、1871年にニコラエフスク・ナ・アムーレからシベリア艦隊の基地がこの地に移された。1879年オデッサ(現、オデーサ)およびペテルブルグとの間に定期航路が開かれた。1888年には沿海州(現沿海地方)の州都となる。1897年ハバロフスクとの間に鉄道(ウスリー線)が通じ、1903年からは直接モスクワとシベリア横断鉄道で結ばれるようになった。ロシア革命(1917)の直後、一時ソビエト権力が成立したが、1918年4月、日本とイギリス軍が上陸、進攻し、8月にはアメリカ軍も加わった。市の権力はめまぐるしく変わった。当初チェコ軍団の反乱最中(1918年6月)に反ボリシェビキの臨時シベリア政府が成立し、ついでコルチャーク軍が市を支配した。だが1920年1月には市民の蜂起(ほうき)が成功し、ボリシェビキを中心とする体制が成立した。これは4月、日本軍により鎮圧されたが、秋には日本軍も撤退を余儀なくされ、市は親ボリシェビキ的な極東共和国軍の手に帰した。1921年5月、ふたたび干渉軍による反革命が成功するが、翌1922年10月には再度、極東共和国軍により奪回され、11月、最終的にソビエト政権の下に入った。1991年ソビエト政権は解体された。

[外川継男・栗生沢猛夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウラジオストク」の意味・わかりやすい解説

ウラジオストク
Vladivostok

ロシア南東部,プリモルスキー地方の行政中心地。ロシア極東部最大の港湾都市で,シベリア横断鉄道,北洋航路の終点。日本海西部にあるピョートル大帝湾の湾奥中央部に突出したムラビヨフアムールスキー半島の南端に位置する。市街はゾロトイログ (金角) 湾にのぞむ半島南岸から,アムール湾に面する西岸にかけて広がり,半島のすぐ南にあるルスキー島が港を外洋から守っている。 1860年軍事哨所が設けられたことに始り,72年港の建設が開始され,沿海州の行政中心地がニコラエフスクナアムーレからここに移された。 90年代末シベリア鉄道が通じ,貿易港として発展しはじめた。ロシア極東艦隊の主要基地として知られている。また極東の重要な漁港で,カニ工船,海獣捕獲船,サケ・マス漁業などの漁船の根拠地となっており,大規模な冷凍設備がある。外国貿易港としての機能は東のナホトカ港に移されたが,内国海運においては大中心地で,サハリン島,千島,カムチャツカ半島,マガダン各方面への旅客,貨物の輸送拠点である。ハバロフスクと並ぶロシア極東部の大工業中心地でもあり,食品工業 (水産加工,食肉,製粉) をはじめとして,船舶修理,製材,木材加工 (合板,家具) ,建設資材,鉱山用機械・設備などの工業が発達している。また極東の文化中心地として,科学アカデミー極東支部,海洋,漁業,交通,森林などの研究所,極東大学 (1920) をはじめ,交通,水産,医学,工業などの大学,博物館,交響楽団などがある。市域とその周辺は景観がすぐれ,世界で最も美しい港の一つといわれ,近郊に多くのサナトリウムや「休息の家」が設置されている。人口 59万2069(2010)。

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