日本大百科全書(ニッポニカ) 「コマチグモ」の意味・わかりやすい解説
コマチグモ
こまちぐも / 小町蜘蛛
節足動物門クモ形綱真正クモ目フクログモ科のコマチグモ属Chiracanthiumのクモの総称。体長8~14ミリメートル、一般に体は淡黄色ないし黄褐色のクモで、鋭い牙(きば)をもつ上顎(じょうがく)の黒色部が目だつ。木や草の葉を巻いて住居をつくり、雌では産室ともなる。日本には5種ほど知られているが、なかでもカバキコマチグモはその毒性と母性愛で有名である。かまれると毒性は致命的ではないが、体質によっては疼痛(とうつう)がおこるなど症状のひどい場合がある。雌はススキの葉を巻いてその中に卵を産む。卵から孵化(ふか)した子グモは、第1回の脱皮を終えると、群がって母グモの体を食い尽くす。
このほか、広葉樹の葉を巻くアシナガコマチグモ、ササやアシの葉を巻くヤマトコマチグモやヤサコマチグモが広く分布し、北海道には腹部に赤い筋(すじ)のあるアカスジコマチグモがいる。コマチグモ類の天敵はツツベッコウバチの仲間で、クモの体に卵を産み付ける。なお、コマチの名は「子待ち」ではなく、美しいクモということで、小野小町(おののこまち)に由来してコマチグモと名づけられた。
[八木沼健夫]