針葉樹の対語で,葉の幅が広い樹木の意味であるが,実際には被子植物双子葉類に属する樹木を総称し,葉の幅が広くても,裸子植物のナギや単子葉類のヤシは含まない。広葉樹には常緑性と落葉性のものがあり,落葉性は乾季や冬季など生育に不適な季節の出現に対応して生じたと考えられている。熱帯から暖帯までの湿潤な地域には常緑広葉樹が,熱帯でも乾季の存在する地域や温帯では落葉広葉樹が優占するのがふつうである。針葉樹と比べると,一般に,幹はまっすぐでなく,枝との区別がつかず,こずえがはっきりしない。萌芽(ほうが)能力が高く,薪炭林のような二次林を構成する。材はキリのように軽いものもあるが,一般に英語でhardwoodと呼ばれるように硬くて重く,加工がむずかしいものが多い。樹形による材の姿の悪さもあいまって,建築用材としてはあまり使われず,工芸的利用が中心である。最近では,技術の進歩により,合板やパルプ材としてよく利用されるようになっている。
執筆者:藤田 昇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
針葉樹の対語で、大きな葉をもつ被子植物のうちの双子葉類の樹木のこと。闊葉樹(かつようじゅ)ともいう。熱帯に起源し、常緑広葉樹から落葉性のような寒冷適応、硬葉性のような乾燥適応の獲得とともに北方乾燥地域に分布を広げた。風媒花を主とする針葉樹に対して、大形の花をもち、昆虫を誘引して受粉する様式が発達している種が多い。現在、地球上でもっとも広く分布し、優占している植物である。広葉樹の材は硬材とよばれ、繊維が基本的な組織となっており、一般に硬い。葉は網状脈で、内皮はみられない。常緑広葉樹と落葉広葉樹に分けられるが、熱帯から暖温帯までの湿潤地域は常緑樹、明瞭(めいりょう)な乾期をもつ地域では雨緑林を形成する落葉樹、地中海式気候の地域には硬葉樹が分布する。さらに北の温帯地方は落葉広葉樹が主体である。日本では冷温帯にブナ、カエデ類、カンバ類、ミズナラ、コナラなどの落葉樹、暖温帯にタブノキ、スダジイ、アカガシなどの常緑広葉樹が分布する。これらの常緑樹は葉面に光沢があり、照葉樹ともよばれる。
[大澤雅彦]
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…広葉樹の対語で,針状の葉をもつ樹木という意味ではあるが,実際には裸子植物の針葉樹類(球果植物類)に属する樹木を総称する。したがって,イチョウやソテツは含まないが,葉の幅は広くてもナギは含まれる。…
※「広葉樹」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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