改訂新版 世界大百科事典 「コミミイヌ」の意味・わかりやすい解説
コミミイヌ
small-eared zorro
small-eared dog
Atelocynus microtis
耳介と四肢が短く暗色の食肉目イヌ科の哺乳類。アマゾン川とオリノコ川の流域の森林にすむ。体長72~100cm,尾長25~35cm,体高約36cm,体重約9kg。ヤブイヌ,カニクイイヌなどに近縁と思われる原始的なイヌ類で,四肢が比較的短くて胴が長く,太い尾は垂らすと先が地に着く。歯が大きく,かむ筋肉(側頭筋)がよく発達しているため頭は大きく見え,耳介がイヌ類としては短くて幅が広く丸みがある。体の毛は短く,全身暗灰褐色~黒褐色で,体の下面は赤褐色を帯び,目の前下方と尾の下面基部に淡色斑がある。四肢の下部と尾の大部分は黒色。密林にすむ唯一のイヌ類で,半水生ではないかといわれるが,きわめてまれな種で,野外での習性はまったく知られていない。飼育するとよくなれ,生肉,草の芽などを食べる。歩き方はネコのようにしなやかで,暗やみでは目が強く光る。雄は肛門腺から麝香に似た強いにおいがする液を分泌するが雌のはほとんどにおわない。
執筆者:今泉 吉典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報