改訂新版 世界大百科事典 「肛門腺」の意味・わかりやすい解説
肛門腺 (こうもんせん)
anal gland
哺乳類の肛門付近にある1対の外分泌腺で,皮膚腺の特殊化したものである。食肉目の動物,とくにイタチやスカンクで発達しており,臭気ある物質を分泌することから臭腺とも呼ばれる。イタチでは〈最後っペ〉をつくる器官として有名である。イタチの肛門腺の腺体は囊状で,管状複合腺,管状胞状複合腺および胞状腺(脂腺)の3種類の腺から構成されている。いずれの腺も葉状構造をなし,槽(内部にある袋状の構造)を中心として,その周囲に分布している。各葉から槽へ導管が伸び,3種類の腺から分泌された物質は槽で混合される。槽からは1本の大きな排出管が伸び,肛門の近くに開口している。分泌物は潤滑剤や消毒剤として,あるいは攻撃,防御,雌雄間の交信などにおけるフェロモンとして作用している。腺の機能は下垂体-生殖腺系や下垂体-副腎皮質系のホルモンによって調節されている。
執筆者:佐藤 英明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報