オリノコ川(読み)オリノコがわ(英語表記)Río Orinoco

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オリノコ川」の意味・わかりやすい解説

オリノコ川
オリノコがわ
Río Orinoco

ベネズエラを大きく半円を描きながら流れて大西洋に注ぐ川。ベネズエラの北西部を除く大部分とコロンビア東部をその流域とする。全長 2740km,流域面積約 94万8000km2ギアナ高地南西部,ベネズエラとブラジルの国境に沿うパリマ山脈西斜面,標高 1074mの地に源を発し,上流部はベネズエラ南部をほぼ北西に流れる。この部分では山地に発する多数の支流を集め流量を増すが,エスメラルダ下流カシキアレ川が南西に分流し,アマゾン川支流ネグロ川と連絡する。コロンビアとの国境をなしながら北流する中流部は,花崗岩の間に峡谷を刻んで流れるため,急流が多い。国境を離れたあたりから下流部となり,川幅も広くなり,低地を北東,次いで東へ流れ,河口に広大な三角州をつくりながら大西洋に注ぐ。バランカス付近を頂点とする三角州は大西洋岸沿いに 400km以上にわたって広がる。おもな支流は左岸グアビアレ川メタ川アプレ川右岸のカウラ川,カロニ川など。流域は熱帯気候に属し,4~10,11月が雨季,11月~3月が乾季。これに伴い流量が大きく変化,下流部沿岸のシウダードボリバルでの水位は乾季 15m,雨季 50m。6~8月には流域の低地は氾濫により冠水,水面下 20mに没するところもある。上流域,ギアナ高地,三角州は熱帯雨林に覆われているが,中・下流部の左岸一帯はサバナ地帯で,リャノスと呼ばれる広大な熱帯草原が広がる。
ヨーロッパ人による流域探検は 16世紀に始まり,1531年にはスペイン人が下流部を航行。1744年イエズス会伝道団がカシキアレ川を発見,1800年には流域を広範囲にわたって探検,調査したドイツ人博物学者アレクサンダー・フォン・フンボルトもカシキアレ川がアマゾン,オリノコ両水系の連絡水路であることを確認。1860年までには汽船も就航したが,水源は 1951年になってようやく確認された。本流,支流を含めて古くから内陸部の住民にとって重要な交通路をなしてきており,今日でも特に氾濫時など,モータをつけたカヌーが唯一の交通手段となっている地域も多い。大型河航船は河口から約 1100km上流,コロンビアとの国境にあるアトゥレス急流部まで航行可能。また水路の浚渫により外洋船もカロニ川合流点まで約 360km遡航できる。流域の開発は,グアヤナ開発ベネズエラ公社のもとに,ギアナ高地の鉄鉱石,カロニ川の水力資源の開発などを中心に進められ,シウダードグアヤナには製鉄所,アルミニウム精錬所などが建設されている。流域には膨大なオイルサンドが埋蔵されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オリノコ川」の意味・わかりやすい解説

オリノコ川
おりのこがわ
Río Orinoco

南アメリカ北部の川。ベネズエラ、ブラジル国境、ギアナ高地のデルガード・シャルボー山(1047メートル)を源流とし、西向きから北向き、さらに東向きと大きく転向し、大西洋に注ぐ。延長2736キロメートル、流域面積94万4000平方キロメートルで、流域はベネズエラとコロンビアにまたがり、本流の一部は両国の国境をなす。その国境の町プエルト・アヤクチョの上流にあって、小舟の遡上(そじょう)限界点になっているアツレスの早瀬より上流を、上流部(アルト・オリノコ)という。上流部の源流より450キロメートルの地点には、アマゾン、オリノコ両水系をつなぐ天然のカシキアレ水路があり、オリノコ川の水の約5分の1が、これを通ってアマゾン川の支流ネグロ川へ分流している。中流部はリャノスとよばれる平原を流れ、下流部で大規模な三角州を形成している。本流上流域や南岸の支流の上流域および三角州地域は、年中多雨の気候であるが、中流域一帯は雨期(5月~10月)と乾期(11月~4月)が顕著なサバナ気候地域である。そのため本流の水位の季節変動は大きく、シウダー・ボリーバルでの最低水位(3月)と最高水位(8月)の差は13メートル余りに達する。北縁部を除き、流域一帯は人口密度が1平方キロメートル当り5人以下の低開発地域である。しかし中流部の北岸には石油(オリノコ油田)やタールサンド、南岸にはセロ・ボリーバル鉱山の鉄をはじめ金、ボーキサイト、マンガンなどの鉱産物があり、流域には有用資源が多い。またギアナ高地からの諸支流は水量が豊かなうえ多くの滝や早瀬をもち、有望な水力資源となっている。すでに支流のカロニ川では大規模な電源開発が行われている。

[松本栄次]

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