改訂新版 世界大百科事典 「サンセール」の意味・わかりやすい解説
サンセール
Sancerre
フランス中部,シェール県のロアール川上流の町。人口2542(1975)。川沿いの丘の上に位置し,東にニベルネ地方,西にベリー地方を控える戦略上の要衝で,百年戦争期には〈ブールジュの王〉シャルル7世がブルゴーニュ派に対抗する最前線の拠点となった。古い家並みを残し,15世紀のサンセール伯の居城の遺構がある。宗教改革期には,早くよりカルバン派の拠点となり,サン・バルテルミの虐殺など幾多の試練に耐え抜いたが,1573年にはカトリック軍により9ヵ月にわたり包囲され,糧食尽き餓死者続出して,ついに開城した。攻囲戦に際する市民の英雄的な抵抗については,ジャン・ド・レリJean de Léryによる感動的な記録が残されており,ラ・ロシェルの抵抗と並び称される。サンセールを中心とする丘陵地帯は良質のブドウ栽培とヤギの飼育が盛んであり,芳香に富む白ブドウ酒〈サンセール〉とヤギの乳のチーズ〈クロタン〉の産地として,フランス美食地図の一翼を占める。
執筆者:二宮 宏之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報