シアノ銀酸塩(読み)シアノぎんさんえん(その他表記)cyanoargentate salt

改訂新版 世界大百科事典 「シアノ銀酸塩」の意味・わかりやすい解説

シアノ銀酸塩 (シアノぎんさんえん)
cyanoargentate salt

銀イオンにシアン化物イオンが配位した錯塩総称。シアン化銀AgCNを過剰のシアン化ナトリウムNaCNまたはシアン化カリウムKCNに溶解すると[Ag(OH)(CN)]⁻,[Ag(CN)2]⁻,[Ag(CN)32⁻,またCN⁻の濃度が高い場合にはおそらく[Ag(CN)43⁻も溶液中に生成する。銀めっきにこのようなシアノ銀酸イオンの溶液を用いると,電着性のよい,緻密(ちみつ)な表面が得られる。銀めっき液の組成一例に,水1lに,AgCN30g,KCN45g,炭酸カリウムK2CO325gを溶かした溶液がある。塩として最も代表的なものはジシアノ銀(Ⅰ)酸カリウムK[Ag(CN)2]である。俗に銀シアン化カリウムとも呼ばれる。白色結晶固体で,AgCNをKCN水溶液に溶かした溶液から得られる。水に対する溶解度25g/100g(20℃)。
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化学辞典 第2版 「シアノ銀酸塩」の解説

シアノ銀酸塩
シアノギンサンエン
cyanoargentate(Ⅰ)

】ジシアノ銀(Ⅰ)酸塩(dicyanoargentate(Ⅰ)):M[Ag(CN)2].シアン化銀(Ⅰ)をシアン化アルカリ水溶液に加えると得られる.多くは濃縮すると固体が得られる.酸H[Ag(CN)2]も針状結晶が得られる.水溶液は強酸性である.K[Ag(CN)2]は無色の六方晶系の結晶.[Ag(CN)2]直線形であり,Ag-C2.13 Å,C-N1.15 Å.水に易溶,エタノールに可溶.乾いた固体は光を当てても変化しにくい.カリウム塩は銀めっきに用いられる.[CAS 506-61-6]【】テトラシアノ銀(Ⅰ)酸塩(tetracyanoargentate(Ⅰ)):M3[Ag(CN)4].AgCNに水溶液中で大過剰のKCNを加え,蒸発乾こすると得られる.K塩は無色の結晶で,水に可溶.[Ag(CN)4] は四面体型である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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