スイス南西部のシオンにある聖堂、兼城塞(じょうさい)。正式にはノートル・ダム・ド・バレール聖堂という。この地方を領有し、聖俗の権力をあわせもっていたシオンの司教が、高さ120メートルの岩山の上に築いた。建造は11世紀に始まって15世紀に及び、ロマネスク式とゴシック式が並存する。内陣にあるロマネスク独特の人物・動物彫刻をもつ柱頭、15世紀中ごろに描かれたゴシック式のフレスコ画、それにキリストの生涯を描いた17世紀バロック式の浮彫りをもつ聖職者席が有名。城内の博物館には、みごとなロマネスク式の家具や、この地方の伝統工芸品が納められている。展望台からはシオンの街とアルプス連峰が眺められる。
[紅山雪夫]