柱とそれが支持するものとの間に設けられる部材。キャピタルともいう。柱頭はとくに石造建築で発達した。これは上からの荷重を細い柱に安全に伝達させる役割をもち,一般に頂部を切断した円錐や角錐を倒立させ,その上に正方形や円形の厚い頂板をのせた形に作られる。柱頭は視覚上重要な部材なので,各種のモールディング(刳形)や文様を刻み,動植物の彫刻などで飾られた。
柱頭の形状は地域と時代によって多様に変化している。古代エジプトでは,ハスの花,パピルス,ヤシの葉などをモティーフとして,それぞれロータス形(鐘形),パピルス形,パルメット形のほか,小神殿をいただくハトホル神の頭部など各種の柱頭を使用した。またアケメネス朝ペルシアでは,2頭の牡牛などの前軀を背中合せにし,その間に梁をかけ渡すようにした特色のある柱頭を用いた。とくに著名なのは古代ギリシアのドリス式,イオニア式,コリント式の各オーダーの柱頭で,ローマ時代にはトスカナ式とコンポジット式がこれに加えられた。ローマ末期には四隅に動物の上半身像を突出させたプロトマイprotomai柱頭が現れたが,6世紀にビザンティンで考案された籠形柱頭は,コリント式を原型とする柱頭の表面にレース状に繊細な唐草を籠編みのように彫り出したものである。これらの柱頭は西方のイスラム建築に受け継がれて変種を生むが,大きな発展はない。西欧のロマネスクでは上部を立方体,下部を球形とする鈍重なブロックblock柱頭(クッションcushion柱頭),これを発展させたスカロップトscalloped柱頭や水草を彫ったものなどのほか,フランスでは聖書中の人物などを彫った寓意柱頭chapiteau historiéが作られ,ゴシックでは単純なクロケットcrocket柱頭が広く用いられた。近世以降はギリシア・ローマの柱頭を復活させ,20世紀初期までこれを盛んに使用した。
執筆者:飯田 喜四郎
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被子植物では胚珠(はいしゅ)は雌しべの子房内に生じるため、裸子植物のように直接に花粉を受けることができず、雌しべの一部がかわって花粉を受ける。この部分を柱頭といい、普通、腺毛(せんもう)が生えて粘液を分泌し、これに花粉が付着して発芽する。位置や形にはかなり変化があり、多くは雌しべの先端部にあるが、しばしば花柱に沿って伸びる。デゲネリヤやドリミスの雌しべでは、二つ折りになった心皮の合せ目全体が柱頭になる。ラン科では大きな花粉塊を受け取るため、柱頭の部分はくぼんでいる。また、サギゴケの柱頭の部分は二裂しているが、花粉がつくと閉じる。
[田村道夫]
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…(8)心皮は胚珠をつつみこんでめしべをつくる。したがって,花粉は直接に胚珠につくことはできず,めしべ上に,腺毛などが生じて受粉のために分化した部分(柱頭)につき,それより花粉管をのばして胚囊に達する。シキミモドキやデゲネリアでは,心皮は二つ折りになって胚珠をつつむが,閉じ方が不完全で,合せ目全体が柱頭となって花粉を受け,原始的なめしべの構造と考えられている。…
…裸子植物の大胞子葉と異なり,被子植物の心皮はその縁が互いに閉じ合わさって袋状となり,中に種子となる胚珠を包み込んでいて,この部分を子房ovaryという。原始的なめしべでは心皮の縁が閉じ合わさったところが柱頭stigmaとなるが,多くの場合子房の上に花柱styleと呼ぶ棒状の部分があり,柱頭はその先端がねばついたり毛がはえていて,花粉を受け止めやすくなっている部分である。トウモロコシの子房は苞の中に包まれているが,ひげ状の花柱と柱頭が長くなり,苞の外に出ていて受粉を可能にしている。…
…彼らは建築の構成要素の中でも特に円柱を重視し,その柱身基部の半径を1単位とし,その倍数を用いて柱の高さや柱間寸法,その他各部の寸法を定めるという,ちょうど日本における木割術のような方式を創り出した。ギリシアの円柱形式には,古い木造建築時代の形をとどめるといわれる重厚なドリス式doric order,小アジア起源の優雅なイオニア式ionic order,前5世紀ころに現れた繊細華麗なコリント式corinthian orderの3種があり,それぞれに特徴的な柱頭(キャピタル)と装飾細部をもっていた。ギリシア人はこれらそれぞれの性格に見合った寸法比例を,さまざまな実験を経ながら定着させていき,前4世紀ころまでには,円柱の形式と柱径,それに柱間数を定めさえすれば,ほとんど自動的に神殿全体の形が構想できるほどになった。…
…また,柱の形を壁に浮き出したものはピラスター(付柱)とよぶ。柱は歴史的に柱基base,柱身shaft,柱頭capitalの三つの要素で構成されてきた。 すでにエジプト建築において,角柱や多角形の柱以外に,アシやハスなどの細い植物を束ねた形式の柱,彫像を組み合わせた柱(オシリス柱,ハトホル柱)など,彫刻的な変化をもつ柱が現れ,以後,柱は建築表現の主要な部分となる。…
※「柱頭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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