柱頭(読み)チュウトウ(英語表記)capital
chapiteau[フランス]
Kapitell[ドイツ]

デジタル大辞泉 「柱頭」の意味・読み・例文・類語

ちゅう‐とう【柱頭】

柱の最上部。西洋古典建築では独特の刳形くりがたと彫刻とがある。
雌しべの先端部。粘液を分泌して花粉を受ける。
[類語]しべ花蕊かずい花心雌蕊めしべ雄蕊おしべ雌花雄花子房花粉受粉

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精選版 日本国語大辞典 「柱頭」の意味・読み・例文・類語

ちゅう‐とう【柱頭】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 柱の上。特に、西洋建築の柱の上端。柱と梁の接する部分で、西洋建築の様式を見わけるのによく用いられ、様式ごとに特徴の異なる彫刻が見られる。キャピタル
    1. [初出の実例]「或は柱頭の苦行を喜び、或は火裏の殉教を愛した基督教の聖人たち」(出典:侏儒の言葉(1923‐27)〈芥川龍之介〉好悪)
  3. 被子植物の雌しべの先端部分。一般には受粉の際花粉がつきやすいように粘液を分泌するなど特殊化がみられる。〔植学啓原(1833)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「柱頭」の意味・わかりやすい解説

柱頭 (ちゅうとう)
capital
chapiteau[フランス]
Kapitell[ドイツ]

柱とそれが支持するものとの間に設けられる部材。キャピタルともいう。柱頭はとくに石造建築で発達した。これは上からの荷重を細い柱に安全に伝達させる役割をもち,一般に頂部を切断した円錐や角錐を倒立させ,その上に正方形や円形の厚い頂板をのせた形に作られる。柱頭は視覚上重要な部材なので,各種のモールディング(刳形)や文様を刻み,動植物の彫刻などで飾られた。

 柱頭の形状は地域と時代によって多様に変化している。古代エジプトでは,ハスの花,パピルス,ヤシの葉などをモティーフとして,それぞれロータス形(鐘形),パピルス形,パルメット形のほか,小神殿をいただくハトホル神の頭部など各種の柱頭を使用した。またアケメネス朝ペルシアでは,2頭の牡牛などの前軀を背中合せにし,その間に梁をかけ渡すようにした特色のある柱頭を用いた。とくに著名なのは古代ギリシアドリス式イオニア式コリント式の各オーダーの柱頭で,ローマ時代にはトスカナ式コンポジット式がこれに加えられた。ローマ末期には四隅に動物の上半身像を突出させたプロトマイprotomai柱頭が現れたが,6世紀にビザンティンで考案された籠形柱頭は,コリント式を原型とする柱頭の表面にレース状に繊細な唐草を籠編みのように彫り出したものである。これらの柱頭は西方のイスラム建築に受け継がれて変種を生むが,大きな発展はない。西欧ロマネスクでは上部を立方体,下部を球形とする鈍重なブロックblock柱頭(クッションcushion柱頭),これを発展させたスカロップトscalloped柱頭や水草を彫ったものなどのほか,フランスでは聖書中の人物などを彫った寓意柱頭chapiteau historiéが作られ,ゴシックでは単純なクロケットcrocket柱頭が広く用いられた。近世以降はギリシア・ローマの柱頭を復活させ,20世紀初期までこれを盛んに使用した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「柱頭」の意味・わかりやすい解説

柱頭
ちゅうとう
capital

建築用語。柱の最上部にある刳形 (くりかた) 。アーキトレーブを広い面積で支え,建築上部の重みをやわらげて柱身に伝達するという力学的な意味と美的,装飾的意味とをもつ。柱頭の装飾様式は,時代と地域によって異なる。エジプトではロータス,パピルス,パルメットの花を様式化した柱頭のものが多い。ギリシアでは平鉢形のエキノスをもつ簡素なドーリス式,渦巻形を左右前後に組合せた優美なイオニア式,アカンサスの葉を様式化した華麗なコリント式の3つの柱頭がある。ローマではイオニア式とコリント式を混合して組合せたコンポジット式が採用された。さらに中世キリスト教時代には,ビザンチン建築では複雑な草花の装飾を施したじょうご形,ロマネスク建築では骰子 (とうし) 形,方円形が多く,ゴシック建築では高脚杯形が一般的となっている。

柱頭
ちゅうとう
stigma

めしべの先端をいう。表面に,花粉をとらえるための粘液や花粉管発芽に役立つ水分を分泌していることも多い。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「柱頭」の意味・わかりやすい解説

柱頭
ちゅうとう

被子植物では胚珠(はいしゅ)は雌しべの子房内に生じるため、裸子植物のように直接に花粉を受けることができず、雌しべの一部がかわって花粉を受ける。この部分を柱頭といい、普通、腺毛(せんもう)が生えて粘液を分泌し、これに花粉が付着して発芽する。位置や形にはかなり変化があり、多くは雌しべの先端部にあるが、しばしば花柱に沿って伸びる。デゲネリヤやドリミスの雌しべでは、二つ折りになった心皮の合せ目全体が柱頭になる。ラン科では大きな花粉塊を受け取るため、柱頭の部分はくぼんでいる。また、サギゴケの柱頭の部分は二裂しているが、花粉がつくと閉じる。

[田村道夫]


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百科事典マイペディア 「柱頭」の意味・わかりやすい解説

柱頭【ちゅうとう】

キャピタルcapitalの訳。柱の上端部。エジプトやミュケナイなどの古代建築から現代建築に至るまで種々の装飾,形式が見られ,ギリシアではドリス式,イオニア式,コリント式の3オーダーにより,独自の柱頭が用いられた。

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普及版 字通 「柱頭」の読み・字形・画数・意味

【柱頭】ちゆうとう

柱端。

字通「柱」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の柱頭の言及

【被子植物】より

…(8)心皮は胚珠をつつみこんでめしべをつくる。したがって,花粉は直接に胚珠につくことはできず,めしべ上に,腺毛などが生じて受粉のために分化した部分(柱頭)につき,それより花粉管をのばして胚囊に達する。シキミモドキやデゲネリアでは,心皮は二つ折りになって胚珠をつつむが,閉じ方が不完全で,合せ目全体が柱頭となって花粉を受け,原始的なめしべの構造と考えられている。…

【めしべ(雌蕊)】より

…裸子植物の大胞子葉と異なり,被子植物の心皮はその縁が互いに閉じ合わさって袋状となり,中に種子となる胚珠を包み込んでいて,この部分を子房ovaryという。原始的なめしべでは心皮の縁が閉じ合わさったところが柱頭stigmaとなるが,多くの場合子房の上に花柱styleと呼ぶ棒状の部分があり,柱頭はその先端がねばついたり毛がはえていて,花粉を受け止めやすくなっている部分である。トウモロコシの子房は苞の中に包まれているが,ひげ状の花柱と柱頭が長くなり,苞の外に出ていて受粉を可能にしている。…

【オーダー】より

…彼らは建築の構成要素の中でも特に円柱を重視し,その柱身基部の半径を1単位とし,その倍数を用いて柱の高さや柱間寸法,その他各部の寸法を定めるという,ちょうど日本における木割術のような方式を創り出した。ギリシアの円柱形式には,古い木造建築時代の形をとどめるといわれる重厚なドリス式doric order,小アジア起源の優雅なイオニア式ionic order,前5世紀ころに現れた繊細華麗なコリント式corinthian orderの3種があり,それぞれに特徴的な柱頭(キャピタル)と装飾細部をもっていた。ギリシア人はこれらそれぞれの性格に見合った寸法比例を,さまざまな実験を経ながら定着させていき,前4世紀ころまでには,円柱の形式と柱径,それに柱間数を定めさえすれば,ほとんど自動的に神殿全体の形が構想できるほどになった。…

【柱】より

…また,柱の形を壁に浮き出したものはピラスター(付柱)とよぶ。柱は歴史的に柱基base,柱身shaft,柱頭capitalの三つの要素で構成されてきた。 すでにエジプト建築において,角柱や多角形の柱以外に,アシやハスなどの細い植物を束ねた形式の柱,彫像を組み合わせた柱(オシリス柱,ハトホル柱)など,彫刻的な変化をもつ柱が現れ,以後,柱は建築表現の主要な部分となる。…

【ボリュート】より

…イオニア式およびコンポジット式オーダー柱頭にみられる渦巻装飾。広義には各種建築装飾の渦形ないし渦巻飾りを意味する。…

※「柱頭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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