シャッシャ(その他表記)Leonardo Sciascia

改訂新版 世界大百科事典 「シャッシャ」の意味・わかりやすい解説

シャッシャ
Leonardo Sciascia
生没年:1921-89

イタリア作家。急進党市議。生地ラカルムートはマフィアの拠点であるシチリア島南西内陸部にある。ファシズムにすらマフィアからの解放の希望をつないだ抑圧された地域性と,そこに根ざした作者のアラブ的要素を包含するヨーロッパ性とが,民衆側に立つリアリズムを共有しつつも,ベルガなど東海岸出身の作家のそれと本質的に異なる文学世界を表出させている。宿命性,不変性という,南部の民衆に押しつけられた神話の否定と,権力機構と国家体制,歴史記述の不正の糾明を通して,眠っていない民衆の真実の姿を描写することを作家としての責務とした。簡潔明晰な言語が追究し,構築する世界は逆説的に限りない混沌の様相を呈している。代表作としては,統一国家のひずみをとらえた《レガルペトラの教区》(1956),マフィアを扱った《梟(ふくろう)の日》(1961),《誰もが自分のものを》(1966),政界を震撼させた《トード・モード》(1974)などの小説やピランデロ評伝などがある。評論集《クロスワード》(1983)はまさに省察と空想の交差点に開かれた理性の声を聴こうとする作者の文学態度の集大成である。イタリアの優れた作家はひとしく優れた地方作家であるといえる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のシャッシャの言及

【シチリア[島]】より

…この活動を受け継いだのが民俗学者コッキアーラGiuseppe Cocchiara(1904‐56)で,コッキアーラは神話論においてパベーゼと,また民話論においてカルビーノと連携し,さらにビットリーニを軸にして北イタリアとシチリア島の文学は,第2次大戦後に緊密な関係を保って,イタリア文学の主潮を形成しつつある。そして1960年代以降は,シチリア島に在住する国会議員作家L.シャッシャがこの100年間のシチリア島民の心理を歴史の動きのなかで考察しつづけている。【河島 英昭】
【古代史】
 古代ギリシア人の伝承によれば,シケリアSikelia(シチリアのギリシア名)島には,シカノス人(イベリア系),エリュモス人(小アジア系),シケロス人(イタリア系)の3部族が居住していた。…

※「シャッシャ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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