ひずみ
strain
deformation
物体の変形の割合をひずみという。たとえば図の(1)のように物体の長さlをΔlだけ伸ばしたとき、Δl/lは伸びのひずみである。図の(1)の場合、幅aがΔaだけ縮むが、Δa/aも負の伸びのひずみである。また図の(2)のように物体を変形させた場合、これをずりといい、Δa/a(ほぼ角度θに等しい)をずりのひずみという。
図の(1)、(2)のように物体が一様に変形したときは、外形の変化でひずみを表すこともできるが、一般にはひずみは物体内部の各場所で次のように定義する。物体中の1点Aが物体の変形によってA'まで変位したとしよう。もしこの変位が物体のあらゆる場所で同じならば、これは単に物体全体がだけ平行移動したことを意味し、物体はひずんでいない。ひずみがあるためには、物体の中の点の変位が物体の中の場所によって違っていることが必要である。変位も場所もともにベクトルで表されるから、ひずみ、すなわち変位の場所による変化は2階のテンソルで表される。物体の全体としての回転もまたひずみとは関係がないことを考えると、ひずみSは次のように2階のテンソルとして表される。
すなわち、ひずみテンソルは6個の独立な成分をもち、そのうちSxx,Syy,Szzは伸びひずみを表し、Sxy,Syz,Szxは、ずりひずみを表す。図の(3)、(4)にSxx,Syzを示す。伸びひずみは体積の変化を伴うが、ずりひずみはそれを伴わない。
Sxx+Syy+Szzが体積の変化の割合(体積ひずみ)を表す。すなわち、物体のある部分の体積vがΔvだけ増すとき、その部分のひずみを用いて
体積ひずみ=Δv/v=Sxx+Syy+Szz
と表される。
[和田八三久・西 敏夫]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
ひずみ(歪)【ひずみ】
物体に外力を加えたとき現れる形や体積の変化。つまり物体内の各点の相互位置の変化をいい,物体全体の移動や回転を含めない。縦ひずみまたは垂直ひずみ(物体内に考えた単位長さの線分の変形による伸縮量),せん断ひずみまたは接線ひずみ(物体内に考えた互いに垂直な二平面が変形後もとの直角から傾いた角度),体積ひずみ(物体内に考えた単位体積の変形による増減量)などに分けられる。→ポアソン比/ひずみ計
→関連項目剛性率|弾性|ねじり試験
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ひずみ
strain
物体に外力が作用すれば変形が生じる。この変形の度合いを表すために,変形量ともとの基準量との比の値をひずみまたはひずみ度という。いま,物体内に微小な直方体要素を仮想し,変形があまり大きくないとすれば平行六面体状にゆがむ。微少変形の場合には直方体要素の一辺の長さ l0 が lになったとした場合(l-l0)/l0を縦ひずみ(または垂直ひずみ)という。微少変形を考えるときには,力の釣合いは変形前の物体の形状について考えてよい。また,初めに直角をなす角からの増減を剪断ひずみという。直方体要素を物体内である特定の方向に選び出せば,直方体のまま伸縮して変形する。このときの縦ひずみを主ひずみといい,生じる方向と面をそれぞれひずみの主軸,主面と呼ぶ。等方・等質の物体では,応力の主軸,主面と一致する。なお,まれに変形量自体をひずみということもあるが,工学分野では通常用いない。
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世界大百科事典(旧版)内のひずみの言及
【伝送理論】より
…伝送路には雑音,漏話,損失,ひずみなどを生ずる不完全さがあり,信号伝送を損なう。こういった伝送系の不完全性に基づく信号の劣化の一般的な解析法を与え,信号の伝送を劣化させる各種要因を明らかにする理論を伝送理論という。…
※「ひずみ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」