日本大百科全書(ニッポニカ) 「シュアード」の意味・わかりやすい解説
シュアード
しゅあーど
William Henry Seward
(1801―1872)
アメリカの政治家。弁護士として世に出(1822)、ホイッグ党のボス、ウィードThurlow Weed(1797―1882)の援助でニューヨーク州知事(1839~43)、連邦上院議員(1849~61)を歴任。この間「一八五〇年の妥協」、カンザス・ネブラスカ法案に反対、ドレッド・スコット判決を非難し、奴隷制との闘争は「制しがたい衝突」と言明する(1858)など、60年までに北部の反奴隷制感情を体現した。また対外的には共和主義とナショナリズムを鼓吹し、共和党の有力政治家として、リンカーン、ジョンソン両政権の国務長官(1861~69)を務め、南北戦争中はヨーロッパ諸国の介入を防ぎ、イギリスとの外交危機を引き起こしたトレント号事件やフランスのメキシコ干渉問題を巧みに処理した。上院議員時代から、太平洋にまたがる「海洋帝国」建設を夢みていたが、戦後膨張主義を推進してアラスカを購入し(1867)、カリブ海進出を図った。また、A・ジョンソン大統領(在任1865~69)を支持し南部との和解政策を進めた。
[高橋 章]