アラスカ(読み)あらすか(英語表記)Alaska

翻訳|Alaska

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アラスカ」の意味・わかりやすい解説

アラスカ
あらすか
Alaska

アメリカ合衆国、最北端の州。面積151万8800平方キロメートル、人口62万6932(2000国勢調査速報値)。面積は50州中最大だが、人口は最小。州都ジュノー。北アメリカ大陸北西端、西半球最大の半島部に位置し、州名もアリュート語で「広大な土地」を意味する。北を北極海、西をベーリング海、南を太平洋およびアラスカ湾と、三方を海に囲まれ、東はカナダ国境を接する。アメリカとロシア連邦の国境線は、ベーリング海のリトル・ディオメード島(アメリカ)とラトマノフ島(ロシア)との間を通っており、両島間は3~4キロメートルしか離れていない。また、アリューシャン列島西端のコマンドルスキー諸島はロシア連邦領である。北にブルックス山脈が走り、中南部から南東部にかけては、断層山脈アラスカ山脈と、ランゲル山脈が走る。南西部は、アリューシャン山脈があるアラスカ半島から、アリューシャン列島へと続いている。太平洋岸の山岳地域は、北アメリカの最高峰マッキンリー山(6194メートル。2015年デナリに名称変更)に代表される急峻(きゅうしゅん)な山が連なり、ロード・アイランド州がすっぽり入るほど大きなマラスピーナ氷河をはじめ、メンデン、ポーテッジなどの大氷河群が集中する。カトマイ火山を有する大火山帯も走っている。太平洋岸の気候は温暖な海洋性で、天然資源も豊富であり、人口はこの地域に多く分布する。内陸地域は亜寒帯気候で、ユーコン川が東西に流れ、広大な三角州が発達している。北極地域は完全なツンドラ気候で、海岸部は年間8か月は凍結し、短い夏の期間のみ沼沢地になって、カリブーアザラシの生息地となる。

 地形上の制約から農業は小規模で、アンカレッジ近郊やケナイ半島で野菜栽培が行われ、コディアク島やユーニマク島で盛んな牧畜が最近注目され始めた。石油、天然ガスの開発が近年脚光を浴びており、州の経済を大きく左右するようになった。開発は1961年のケナイ油田に端を発し、北部地域の油田とあわせて将来は世界最大の産地になると予想されている。漁業は古くから主産業で、漁獲高世界一のサケを中心に、カニ、エビ、タラ漁が盛んである。州南東部の都市ケチカンはサケ加工業で世界的に有名。また、豊富な林材を利用しての製材業や木工業のほか、毛皮も重要である。地理的にはロシアの極東に対する防衛基地としての重要性がつねに高く、州経済に与える影響も強い。州人口の15.6%はアラスカ先住民およびアメリカ・インディアン、4.0%はアジア系、3.5%はアフリカ系アメリカ人で占められる(2000国勢調査速報値)。エスキモーはその数が減少傾向にあるが、北部地域に集中して住み、漁業で生計をたてている。

[作野和世]

歴史

1741年、ロシアのピョートル帝に雇われたデンマーク人ベーリングが発見した。ロシア毛皮商人が徐々に入植していき、18世紀末にはロシア・アメリカ会社が毛皮貿易を独占し、シトカを建設して19世紀初めに繁栄を誇った。しかし19世紀なかばになると、ロシアはイギリスがアラスカを奪いはしないかと恐れて、アメリカへの売却交渉を始め、結局1867年にアメリカのシュアード国務長官が720万ドルで購入した。これは当時「シュアードの冷蔵庫」などと嘲笑(ちょうしょう)されたが、シュアードは太平洋にまたがる海洋帝国建設の一環として位置づけていたといわれる。1896年クロンダイクで金鉱が発見されると、アラスカ一帯でゴールド・ラッシュが起こり、カナダと国境紛争が生じたが、これも調停でアメリカに有利に解決した(1903)。

 1912年に準州となり、1959年に49番目の州として連邦に編入され、アメリカの大陸防衛体制の前哨(ぜんしょう)地域として戦略上重要な役割を担っている。

[高橋 章]

世界遺産の登録

アラスカ州のランゲル・セント・エライアス国立公園保護区と、隣接するカナダ・ユーコン準州のクルアーニー国立公園保護区が1979年にユネスコ(国連教育科学文化機関)によって世界遺産の自然遺産に登録されたのをはじめ、1992年にはアラスカ州のグレーシャー・ベイ(氷河湾)国立公園保護区、1994年にはカナダ・ブリティッシュ・コロンビア州のタッチェンシニー・アルセク州立自然公園を含む広域の自然遺産「クルアーニー、ランゲル・セント・イライアス、グレーシャー・ベイ、タッチェンシニー・アルセク」として登録されている(世界自然遺産)。

[編集部]


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