共和党(読み)きょうわとう

精選版 日本国語大辞典 「共和党」の意味・読み・例文・類語

きょうわ‐とう ‥タウ【共和党】

[1] 〘名〙 共和主義者。また、共和制を主張する政党。〔仏和法律字彙(1886)〕
[2] 民主党と並ぶ、アメリカの二大政党の一つ。一八五四年結党。奴隷制度の廃止、農地法の制定、保護関税などを政綱として、一八六〇年、初めてリンカーン大統領選挙戦で勝利。以後、東北部の商工業者、農民などの支持を受けて多くの大統領を輩出。〔袖珍新聞語辞典(1919)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「共和党」の意味・読み・例文・類語

きょうわ‐とう〔‐タウ〕【共和党】

民主党と並ぶ米国の二大政党の一つ。1854年結党。1860年リンカーンを大統領に当選させる。農地法(ホームステッド法)・保護貿易などのほか奴隷制廃止など進歩的政策で北東部の産業資本家・西部の農民の支持を受けて発展。20世紀中盤からは民主党の左傾化と入れ替わるように保守化し、軍需産業・南部保守層・キリスト教右派などを支持基盤とする。ルーズベルトアイゼンハワーニクソンフォードレーガンブッシュ父子トランプなどの大統領を輩出。
フランス保守政党国民運動連合から2015年に改称。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「共和党」の意味・わかりやすい解説

共和党【きょうわとう】

民主党と並ぶ米国の大政党。1854年カンザス・ネブラスカ法制定を機に奴隷制反対の地方政党が各州に成立,1856年これらが統一して現在の党が成立した。1860年リンカンが大統領に当選してから急激に発展,南北戦争中から産業資本主義を促進。19世紀後半―20世紀初期にはほとんど政権の座にあったが,保守的傾向が強まり,1929年の大恐慌以後はニューディール政策を採った民主党に主導権を奪われた。1953年―1961年アイゼンハワーが政権を握り,またベトナム戦争や国内問題の深刻化により勢力を回復,1968年にニクソンが大統領に当選,1974年ニクソンがウォーターゲート事件で辞任に追い込まれ,代わって大統領に就任したフォードも,1976年民主党のカーターに敗れ,共和党政権は8年で終わった。しかし1980年にはレーガンがカーターを大差で破り,1984年再選された。1988年にはレーガンのもとで副大統領を務めたブッシュ(父)が当選したが,1992年と1996年民主党のクリントンに連続して敗れ,2000年にブッシュ(子)がゴアと僅差で当選,2004年には民主党のJ.ケリー候補を破り再選された。2006年中間選挙で敗北し,上下両院の多数派を民主党に奪われた。2008年の大統領選ではマケイン候補が民主党オバマに破れ,両院選挙でも敗北した。しかし,2010年の中間選挙では下院で60議席以上を増やして大勝,下院の過半数を奪還した。2012年の大統領選挙予備選では中道政策を掲げるロムニー候補が共和党大統領候補として選出され,11月現職の民主党オバマ大統領と対決したが白人・富裕層寄りという評価を最後まで崩せず敗れた。大統領選と同日に行われた下院選では共和党234議席,民主党201議席で多数を獲得,政権を厳しくチェックする力を保持した。2014年の中間選挙では,下院で共和党は247議席を獲得,同党の議席数としては第2次大戦後最多と歴史的勝利となった。上院でも54議席を獲得,共和党が上下院で過半数を占める。外交政策は孤立主義的,州権主義的であり,経済政策では伝統的に小さな政府を標榜,財政負担増の政策には反対する傾向にある。政党のシンボルは象。
→関連項目アメリカ学派アメリカ合衆国草の根民主主義財政の崖奴隷廃止運動二大政党制フェデラリスツマッカーシー

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

改訂新版 世界大百科事典 「共和党」の意味・わかりやすい解説

共和党 (きょうわとう)
Republican Party

アメリカの二大政党の一つ。南北戦争を前に奴隷制拡大反対の諸勢力を結集して,1854年に形成され,56年の選挙に大統領候補を立て全国政党として登場し,60年の選挙にはその候補リンカンを当選させて,二大政党の一つとしての地位を確立した。シンボルマークはゾウ。

 歴史的には,建国期のフェデラリスツ,1830年代以降のホイッグ党の流れをくむ。19世紀中葉に民主党が南部プランター勢力の政党と化するに及び,それに対抗して東北部の新興産業資本勢力と中西部の自営農民層との連合体として組織された。西部出身でありかつホイッグ党出身のリンカンは,この連合の組織者であるとともに象徴でもあった。60年の政綱では奴隷制拡大反対を最大公約数とし,産業資本には保護関税政策を,農民層にはホームステッド(自営農地)法制定を,両者を結ぶものとして大陸横断鉄道の実現を約束し,広く東部の都市住民,西部の農民に訴えている。南北戦争後,共和党は急激に発展する東部の工業,ますます拡大する西部の農業を背景に,アメリカ資本主義の興隆を担う政党として,1929年よりの大恐慌にいたるまで,2名の民主党大統領の任期(S.G. クリーブランド,T.W. ウィルソン)を除き,政権を続けて掌握していた。その政策も,保護関税政策,鉄道などの企業への援助策,金本位政策などいわゆる大実業の利益を促進するものが多かった。外交面においても,米西戦争,門戸開放政策,ドル外交など世界強国としてのアメリカの利益を促進する積極政策を展開した。しかし,共和党自体の中にも,ウィスコンシン州ラ・フォレットに代表されるような農民層を地盤とする革新勢力が存在していたことも留意されなければならない。

 1932年の選挙以降,共和党は半ば万年少数党化し,大統領選挙ではアイゼンハワー,ニクソン,レーガンなどを当選させたが,下院の議席では2期4年を除きつねに少数党であった。40年以降は,民主党のニューディール政策を基本的には認め,穏健な中道政策を表明してきたが,民主党政権の下で,一方で社会福祉政策の費用が膨大化し,連邦政府の機構が巨大化し,他方ベトナム戦争以降アメリカの対外威信が弱まるにつれ,国内的には小さな政府を,対外的には強いアメリカを標榜し,アメリカ社会の右傾化に乗じて,しだいに勢力を拡大してきた。ことに,人口の比重が東北部の大都市地帯(スノー・ベルト)から西部,南部のいわゆるサン・ベルトへと移行するに伴い,そうしたサン・ベルトを背景に,共和党の支持層が増大しつつあることは注目してよい。
民主党
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「共和党」の解説

共和党(きょうわとう)
Republican Party

ジェファソンを指導者として1794年頃形成されたアメリカの政党。1801年に政権を得た後しだいに連邦党を圧倒し,16年以後対立政党を持たなかったが,24年までに党の統一は失われ,やがて民主党ホイッグ党とに分かれた。

②アメリカの二大政党の一つ。奴隷制の拡大に反対する人々が1854年に組織したのが始まりで,北部諸州で急速に勢力を伸ばし,60年にはリンカンを大統領に当選させた。南北戦争中から戦後にかけて,共和党は奴隷を解放し黒人に市民権を与える政策を推進したが,南部では勢力を築くことができず,76年以後,南部の人種問題の処理を南部白人に任せた。また南北戦争中から保護関税,鉄道建設助成など産業資本家の要望に沿う政策を推進した。共和党は南北戦争後1932年まで,4度の例外を除き大統領選挙に勝ってきたが,32年の選挙に敗北した後は保守政党として敬遠され,50年代に8年間政権を保持しただけだった。しかし60年代末からは,保守主義への再帰傾向とソリッド・サウスの崩壊とに助けられて,共和党の大統領が多くなっている。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「共和党」の解説

共和党
きょうわとう
Republican Party

アメリカの2大政党の1つ
1820年のミズーリ協定を改定するカンザス−ネブラスカ法案が1854年に提出され,奴隷州拡大の気運がたかまったとき,奴隷制拡大に反対する北部のホイッグ党,自由土地党,自由党,南部民主党の一部が参加し,同年7月のミシガン州大衆集会でこの名称に決定した。1856年の大統領選挙では敗れたが,11州で優勢であり,60年の選挙にリンカンが当選した共和党は,保護関税・金本位制をとり,南北戦争後は資本家政党の性格が強くなった。その後大恐慌に至るまでのほとんどの期間,政権を掌握し,大企業の利益を擁護,外交面においても対外積極策を展開した。1930年代には,下院においては少数党であった。ヴェトナム戦争後の1970年代以降には「強いアメリカ・小さな政府」を掲げ,しだいに勢力を回復してきた。シンボルマークはゾウ。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の共和党の言及

【政党】より


[アメリカ]
 アメリカの政党は,皮肉なことに反政党主義的立場に立っていたワシントンの下での主要閣僚であったハミルトンとジェファソンによって,18世紀末に創設された。すなわち連邦党と民主共和党である。当初優位に立っていた連邦党は19世紀に入ると民主共和党に連敗して消滅し,民主共和党体制が続く中で〈ジャクソニアン・デモクラシー〉時代が到来したが,この間に民主党と呼ばれるようになった民主共和党では,党内のジャクソン派と反ジャクソン派の対立が激化し,反ジャクソン派は1828年に国民共和党(1834年にホイッグ党と改称)を結成し,40年にハリソン,48年にタイラーを大統領に当選させた。…

※「共和党」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android