改訂新版 世界大百科事典 の解説
シュリー・ナーラーヤナ・グル
Śrī Nārāyaṇa Guru
生没年:1854-1928
近代インドの宗教・社会改革者。ケーララ州の州都トリバンドラムの近くにあるチェンバランディで,不可触民イーラワー・カーストの家に生まれた。1884年妻と別れて出家,88年,34歳のとき大きな転機を経験,自分のみの解脱を求めることを無意味と考え,下層の人々の宗教的・社会的救済にのり出し,1903年シュリー・ナーラーヤナ法(ダルマ)普及協会(S.N.D.P.Yogam)をアルビプラムに設立。不二一元論派の哲学に立脚し,〈人類には,一つのカースト,一つの宗教,一つの神〉をスローガンにして,各地に多くの寺院や僧院を下層民のために建立,種々の改革を断行し,飲酒を禁じ,旧習を廃し,カースト制度に対する批判運動などに没頭した。サンスクリット,マラヤーラム,タミル語で書かれた約43の著作を残したが,《カースト考Jāti-mīmāṃsā》《自我の教説百頌Ātmopadeśaśataka》《哲学の華鬘(けまん)Darśanamālā》などが重要。
執筆者:前田 専学
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報