仏殿の内陣を荘厳(しようごん)する仏具で,釣環(つりわ)で長押(なげし)や梁にかける。サンスクリットkusmamālāの訳。インドの風俗にはじまり,元来は生花を糸で貫いて首にかけ,装身具としたものである。のちに供養物として仏前に供えられるようになり,また花(華葩(はなびら))をはずして華籠(けこ)に入れ,これをまくのが散華供養である。中国,日本ではさらに転じて荘厳具となった。日本では天武天皇の死没に際してその殯宮(もがりのみや)に花縵(はなかずら)が供えられたことが《日本書紀》にみえるが,これが生花であったか造花であったかは明らかではない。しかしその後,永久性を保つため木板,牛皮,金銅板,糸,玉などをもって代え,華鬘代と呼ばれ,さらにこれらも華鬘と称して現在に及ぶ。当初の生花を連ねた伝統は形式に残され,いずれも中央に結びひも状の装飾を残すのがふつうである。糸華鬘を除いて一般に,うちわ形の上部に釣環,下部に総金具,鈴,瓔珞(ようらく)などを付け,板のおもてに迦陵頻伽(かりようびんが)文,蓮華文,宝相華唐草文などを,金銅板製では透彫りで,木板や牛皮製などでは彩色で描いたものが多い。平安時代の代表作として,京都・東寺の〈迦陵頻伽文牛皮華鬘〉(現,奈良国立博物館),岩手県中尊寺金色堂の〈金銅宝相華文透彫華鬘〉などがあげられる。
執筆者:蔵田 蔵
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仏教寺院の荘厳具(しょうごんぐ)の一つ。もとは髪に挿す花飾りのことで、インドでは生花を花輪にして首にかけたりした。それが仏教の風習として仏像の首や肩にかけて供養の法の一つとなった。日本ではさらに仏堂内部の荘厳具として、梁(はり)や欄間(らんま)にかけるようになり、木、金属、獣皮などを素材にしてつくられた。なかには木製彩色の花輪の形をしたものもあり、青銅に鍍金(めっき)をした団扇(うちわ)型のものや、牛皮に極彩色を施したものもある。岩手県中尊寺の金銅華鬘(国宝)や奈良国立博物館の牛皮彩色華鬘(国宝、京都東寺(とうじ)旧蔵)は平安期の工芸品を代表するものとして名高い。
[永井信一]
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