化学辞典 第2版 「シリコモリブデン酸」の解説
シリコモリブデン酸(塩)
シリコモリブデンサンエン
silicomolybdic acid(silicomolybdate)
Siをヘテロ原子として含むMoのヘテロポリ酸の慣用名.モリブドケイ酸(学術用語方式),ケイモリブデン酸(通称)ともいう.シリコ十二モリブデン酸塩(IUPAC半体系的慣用名)(silicododecamolybdate):H4[SiMo12O40]・nH2O(n = 5,8,14,29,30,31など.市販品は十四水和物).代表的なシリコモリブデン酸.MoO3をNaOH水溶液に溶かし,HNO3で酸性にした後,これにNa2SiO3のNaOH水溶液を加えるとNa塩が得られる.これを硫酸で酸性にした後,エーテルで遊離酸を抽出する.H4[SiMo12O40]・14H2Oは三斜晶系で(三十一水和物は正方晶系),ケギン構造をもつ.正八面体型の3個のMoO6からなる三角形型のMo3O13が4個で正四面体型のかごをつくり,そのなかに正四面体型のSiO4がO共有で入っている.酸は,α,βのケギン型がともに得られているが,β型のほうが不安定である.Na,K,Mg,Caなどの塩も得られている.酸,アルカリ塩とも,黄色の結晶で,水に易溶,酸はエタノール,エーテルなどにも可溶.シリコ十二タングステン酸よりは不安定である.還元されると青色になる.このほか,MⅠ8[SiMo11O39],MⅠ4[SiMoW11O40]などが知られている.ケイ酸の比色定量に利用される.「モリブデン及びその化合物」は化学物質排出把握管理促進法・第一種指定化学物質.[CAS 12027-12-2]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報