改訂新版 世界大百科事典 「ジャディディズム」の意味・わかりやすい解説
ジャディディズム
Dzhadidizm
ロシア帝国で1880年代,タタール・ブルジョアジーの間から生まれ,90年代以降中央アジアに流布したブルジョア・リベラリズム,民族主義運動。ジャディド運動ともいう。当初は伝統的イスラム教育の改革を唱える〈新方式〉(アラビア語で〈ウスル・イ・ジャディド〉)教育運動であった。中央アジアで1905年のロシア革命以後,文化主義を脱し,イスラム世界のブルジョア的発展のための改革を主張するリベラリズムの政治運動の色彩を強め,特に08年〈青年トルコ〉の革命に強い影響を受けた。17年以前は明確な組織・綱領をもたない各地の多様な諸集団,諸潮流であり,パン・トルコ主義,パン・イスラム主義と影響し合った。二月革命後,シュロ・イ・イスラム党(トルキスタン),青年ブハラ党,青年ヒバ党などを結成,十月革命後ソビエト権力と対立,トルキスタンのコーカンド自治政府(1917-18),中央アジア一帯を激しくおおった内戦期の武装抵抗バスマチ運動(1917-26)の一翼を担った。ムスリム地域に根強い影響力をもち,バスマチの武装抵抗は一部では30年代初頭まで続いた。
執筆者:高橋 清治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報