トルキスタン(読み)とるきすたん(英語表記)Turkistān

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トルキスタン」の意味・わかりやすい解説

トルキスタン
Turkistān

一般に中央アジアをさす。ペルシア語で「トルコ人の地」という意味。現在の中国のシンチヤン (新疆) ウイグル (維吾爾) 自治区,およびカザフスタンキルギスタジキスタンウズベキスタントルクメニスタン各国の地にあたる。アフガニスタンを含める場合もある。タジキスタンを除いて,これらの地域にはトルコ系住民が多い。パミール高原で二分され,それぞれ東トルキスタン西トルキスタンともいう。この地域は元来,イラン系,アーリア系住民の地であった。ところが6世紀半ば頃から西突厥の支配がアムダリアに達して以後,7世紀にはトルキスタンの呼称が現れる。8世紀にトルコ勢力が後退し,イスラム勢力が浸透するとイスラム地理書ではシルダリア以北または以東をトルキスタンと呼んだ。一方,9世紀半ばに遊牧ウイグル族はモンゴル高原から四散して,河西トゥルファン (吐魯番) 盆地タリム盆地セミレチエのカルルク領へと移動し,各地のオアシス住民と雑居して混血し,またみずから定着民となっていった。住民が支配勢力の言語であるトルコ語を受け入れただけの場合であっても,いわゆるトルコ化は決定的なものとなっていったといえる。その後,西方ではイスラム教影響を深く受けながらカラハン朝サーマン朝ガズニー朝セルジューク朝が,東方では仏教文化主体とした「天山ウイグル王国」がそれぞれ有力な政権として登場し,アーリア系,イラン系の文化,イスラム文化,さらには漢文化と混合しながらも,独自のトルコ的文化,社会が形成された。これが,いわゆる「トルキスタンの成立」である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トルキスタン」の意味・わかりやすい解説

トルキスタン
とるきすたん
Turkistān
Turkestan

「トルコ人の住地」を意味するペルシア語。この語によって表される地域は歴史的に変化したが、現在では中央アジアのオアシス地帯をさす。パミール高原を挟んで、東トルキスタン(中国領の新疆(しんきょう)ウイグル自治区南部)と西トルキスタン(ウズベキスタン、タジキスタン、キルギス、トルクメニスタンの各共和国とカザフスタン共和国)とに分かれるほか、アフガニスタン北部をアフガン・トルキスタンという場合もある。これらの地域に主として、ウイグル、ウズベク、キルギス、カザフ、トルクメンなどのトルコ系民族が居住しているためである。ただし、この地域がトルコ人の住地となったのは、北の草原地帯からトルコ系遊牧民が次々に移住して(9世紀中ごろ~16世紀)、ここを「トルコ化」したのちのことである。なお、シルダリヤ中流域にあるトルキスタン市は、15世紀以降この町と周辺がトルキスタン地方とよばれていた名残(なごり)をいまに伝えるものである。

[堀川 徹]

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