化学辞典 第2版 「ジュウテロン」の解説
ジュウテロン
ジュウテロン
deuteron
重陽子ともいう.重水素の原子核 2H(d,Dとも記す).1個の陽子と1個の中性子が結合したもので,スピン量子数1,パリティ(偶奇性)は偶,磁気能率0.8574μN(核磁子)で小さな電子四極子能率をもっている.重陽子の関与する核反応(d,p),(d,n)反応においては,重陽子の結合エネルギーは2.225 MeV で,原子核内の核子の結合エネルギー1個当たり平均約8 MeV に比べて低く,重陽子が弱い結合をもった軟らかい物体であることから,重陽子は核内まで貫通しえず,核表面で分解し,一つの核子を失い,ほかの核種がそのまま飛び去ったとみなすことができる.この反応をとくに重陽子のストリッピング反応という.これに対し,(p,d),(n,d)反応は,入射した核子が核表面から一つの核内核子を引っ張り出して重陽子を形成したとみなすことができる.この反応をピックアップ反応という.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報