翻訳|deuteron
陽子1個と中性子1個とが結合してできた原子核の呼称で、ジュウテロン(デューテロン)ともいい、重水素原子Dの核をなすので重水素核ともいう。結合エネルギーは約200万電子ボルト(質量欠損に直すと重陽子質量の約0.1%)である。これは平均的な原子核の結合エネルギーに比べて非常に小さく、重陽子では陽子と中性子が大変弱く結合していることを示している。陽子2個だけあるいは中性子2個だけの原子核は安定に存在しないので、質量数(陽子の数と中性子の数の和)が2である原子核は重陽子だけであり、最小の質量の原子核である。このことは、同種核子間に働く力よりも陽子と中性子の間に働く力のほうが強いことを示している。重陽子では、陽子と中性子のスピンは同じ向きで平行になっており、また、全体の形はほとんど球形だが、わずかに楕円(だえん)形に変形している。これは核磁気共鳴のスペクトルは水素から得られるものより大きな分岐を示す理由として、重水素核が電気四重極モーメントをもつことがわかったからである。
小さな原子核どうしが核融合をおこしてエネルギーを解放する核反応は、恒星のエネルギー生成の主役である。また不幸にも水爆にも使われているが、化学反応に比べて桁(けた)違いに大きなエネルギーである。なかでも重水素どうしや重水素とトリトン、ヘリウム、リチウムなどとの核融合反応は重要である。重陽子を含んだ重水D2Oは天然の水H2O中に約0.015%含まれており、地球上で十分得られるわけで、核融合炉のエネルギー源として注目されている。
[坂東弘治・元場俊雄]
デューテロンともいう。水素の同位元素である質量数2の重水素の原子核。2H,D,dなどの記号で表される。重陽子は陽子1個と中性子1個から構成され,安定で,その結合エネルギーは約2.225MeVである。スピンは1で,磁気モーメントは核磁子を単位として約0.846,電気四重極モーメントは0.286efm2(eは単位電荷,1fm=10⁻13cm)である。2体系なので理論的取扱いも簡単で,陽子と中性子の間に働く核力についての重要な情報源である。とくに電気四重極モーメントをもつことは,陽子と中性子の相対運動において,軌道角運動量量子数が0のS状態だけでなく,2のD状態も混じっていることを意味し,核力の中にスピンと軌道運動を結合させるテンソル力が存在することを示している。また,その質量数当りの結合エネルギーが他の原子核と比べて小さいために,d+d→3He+n,d+d→3H+p,d+3H→4He+n,d+3He→4He+pなどが比較的大きなエネルギーを放出する発熱反応で,核融合反応の代表的なものであり,また宇宙における元素の形成や恒星のエネルギー源として重要な役割を果たしている(Heはヘリウム,pは陽子,nは中性子)。
→核融合
執筆者:矢崎 紘一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…またこれらに対し,ふつうの水素1Hを軽水素あるいはプロチウムprotiumとも呼ぶ。またDの原子核D+(1個の陽子と1個の中性子から成る)を重陽子あるいはジュウテロンdeuteron,Tの原子核T+(1個の陽子と2個の中性子から成る)を三重陽子あるいはトリトンtritonと呼び,H+すなわち陽子(プロトンproton)と区別する。 ジュウテリウムは,天然の水素や水素化合物中に水素の全量に対して0.015%含まれ,重水D2Oの電気分解でD2の気体として取り出される。…
…またこれらに対し,ふつうの水素1Hを軽水素あるいはプロチウムprotiumとも呼ぶ。またDの原子核D+(1個の陽子と1個の中性子から成る)を重陽子あるいはジュウテロンdeuteron,Tの原子核T+(1個の陽子と2個の中性子から成る)を三重陽子あるいはトリトンtritonと呼び,H+すなわち陽子(プロトンproton)と区別する。 ジュウテリウムは,天然の水素や水素化合物中に水素の全量に対して0.015%含まれ,重水D2Oの電気分解でD2の気体として取り出される。…
…陽子は水素原子の原子核であり,水素イオンとして陽子がつくられる。同位体として質量数が2の重陽子(デューテロン),質量数が3の三重陽子(トリトン)が存在する。 陽子の発見は,1886年ドイツのE.ゴルトシュタインが,陰極線の実験において陽極からも放射線が出ていることを見いだしたのに始まる。…
※「重陽子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新