改訂新版 世界大百科事典 「ストロンチウム同位体比」の意味・わかりやすい解説
ストロンチウム同位体比 (ストロンチウムどういたいひ)
strontium isotopic ratio
天然に存在するストロンチウムの二つの同位体,87Srと86Srの原子数の比。86Srは元素合成時に作られるだけだが,87Srは87Rb(ルビジウム87)の崩壊により作られるので,試料中の87Sr/86Srの値は87Rb/86Srの値にほぼ比例して年とともに増加する(ルビジウム・ストロンチウム法)。隕石の研究から太陽系形成時の値は0.699とされており,地球もこの値をもって誕生した。地球において地殻がマントルから分化する時,SrもRbも地殻に移るが,Rbの方が移りやすい。その結果,地殻では87Sr/86Srの値の成長が速くなる。上部マントルの87Sr/86Srの値は現在0.704程度と考えられているが,地殻では0.72以上もまれでない。新しい地殻物質も海洋底玄武岩のようにマントルから直接分化したものは低い値を示すが,多くの花コウ岩のように地殻物質から再生されたものは,高い値を示す。このことから岩石形成時の87Sr/86Srの値を調べれば,材料が地殻起源のものかどうかがわかる。
執筆者:斎藤 和男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報