精選版 日本国語大辞典 「隕石」の意味・読み・例文・類語
いん‐せき ヰン‥【隕石】
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地球外から地球に飛び込んできた固体惑星物質の総称。その大部分は、火星と木星の間に位置する小惑星帯から由来したものであり、45.5億年前の原始太陽系の中で形成された小天体の破片である。しかしその一部には、彗星(すいせい)の残骸(ざんがい)と考えられるもの、あるいは火星、月の表面物質が、なんらかの衝撃によって飛散したと思われるものも混在する。
隕石の大きさは、小さなもので数グラム、もっとも大きなもので60トンに達する。大きな隕石が地表に激突すると隕石孔が形成される。地球には54個の隕石孔が知られているが、このうち、アメリカのアリゾナ州の砂漠にある隕石孔はとくに有名である。これは、直径1295メートル、深さ174メートルの孔であり、1万トン級の隕鉄が超音速で衝突して形成されたと推定される。しかし、その大部分は蒸発し、数キログラムの隕鉄が孔の周辺から回収されたにすぎない。なおこの隕石孔の底部から、すでに人工的に合成されていたシリカの高圧鉱物が天然において初めて発見された。衝突時に発生した衝撃波が、地表の石英粒をコース石、スティショバイトとよばれる高圧鉱物に転換したのである。
大英博物館発行の隕石カタログによれば、1960年代までに世界中で2045個の隕石が知られていた。1970年代に入ると、日本の国立極地研究所が組織的な南極隕石探索を開始し、多くの隕石を回収、その結果国立極地研究所南極隕石センターには1万6000個を超える隕石が保管されることとなった。日本のほかにはアメリカや中国などが数多く保有している。
隕石には、隕鉄、石鉄隕石、石質隕石の3種類がある。隕鉄は鉄・ニッケル合金である。石鉄隕石は鉄・ニッケル合金とケイ酸塩鉱物をほぼ等量含む。石質隕石は主としてケイ酸塩鉱物からできている。この石質隕石は、その内部構造に基づいてさらに二つのグループに分類されている。内部に、コンドルールとよばれるミリメートル・サイズのケイ酸塩液滴を含むものはコンドライト、含まないものはエコンドライトと名づけられている。エコンドライトは地球の火成岩によく似た隕石である。一方、コンドライトを特徴づけるコンドルールは、地球上の岩石には存在しない。
隕石と地球上の岩石との間にみられる大きな違いは、金属鉄の有無にある。地球上の岩石には金属鉄はほとんど含まれないが、隕石では金属鉄を含まないもののほうがまれである。地球上の岩石に比較すると、隕石はかなり還元的な環境で形成されたといえる。ちなみに、人類が金属鉄の有用性に気づいたのは、隕鉄の存在によるという説がある。また、地球の中心部コアが金属鉄からできているという認識も、隕鉄の存在に依存するところが大きい。
化学組成的に隕鉄、石鉄隕石、エコンドライト、コンドライトに分類される隕石についてその成因を考えると、コンドライトとその他の隕石の二つのグループに大別するほうが明解である。コンドライトの化学組成は、太陽大気の組成とたいへんよく似ている。太陽は太陽系を構成する物質の99%以上を占めるので、コンドライトは太陽系全体を代表する始原的な固体物質であるといえる。一方、隕鉄、石鉄隕石、エコンドライトの化学組成は、太陽大気の組成とは甚だしく異なり、その構造は溶融物が固化するときに生ずる特徴を示している。それゆえ、コンドライトは始原隕石、その他の隕石群はまとめて分化隕石とよばれる。
分化隕石グループは、始原隕石物質が一度溶けて分化して形成された。その母天体は、地球に似た層構造をもつ、直径数百キロメートルの小天体であった。隕鉄はこの小天体のコアを、石鉄隕石はコア・マントルの境界を、エコンドライトはマントルと殻を占めていたのであろう。
始原隕石と分化隕石を区別するもう一つの特徴は落下頻度である。地球に落下する隕石はコンドライトが圧倒的に多く、分化隕石グループの落下頻度は、合計しても15%に満たない。小惑星帯にはコンドライト的小天体が多く存在し、分化隕石的小天体の数は少ない。小惑星帯を構成する小天体群は、かつて存在した大惑星の破片ではなく、惑星まで成長することができなかった微惑星の集合体である。
始原隕石コンドライトの生成年代は、45.5億年であり、その後地球を訪れるまでに二次的に溶けた形跡がない。それゆえ、この隕石は星雲状態にあった原始太陽系の中で最初に形成された微惑星の破片であるといえる。コンドライトには、鉄の酸化還元状態に大きな違いがみられる。また、その中には高温鉱物と低温鉱物が共存する。原始太陽系星雲の温度分布および酸化還元状態は一様なものではなく、刻々と変化するものであった。
コンドライトのうち、揮発性成分をより多く含む炭素質コンドライトは、太陽系のロゼッタ・ストーンとしてとくに名高い。この隕石に含まれる高温鉱物の一部に、地球、月、その他の隕石とは異なる同位体組成を示すものがある。この異常物質は、原始太陽系星雲に打ち込まれた超新星放出物である可能性が大きい。一方、その低温鉱物には、各種アミノ酸をはじめいろいろな有機化合物が含まれている。原始太陽系星雲は、異なる原子核合成の歴史をもつ塵(ちり)の混合物であり、生命の前駆物質である有機化合物はすでにこの星雲の中に用意されていたのである。
[小沼直樹]
『小沼直樹・水谷仁編『岩波講座 地球科学13 太陽系における地球』(1978・岩波書店)』▽『国立極地研究所編『南極の科学6 南極隕石』(1987・古今書院)』▽『F・ハイデ、F・ヴロツカ著、野上長俊訳『隕石――宇宙からのタイムカプセル』(1996・シュプリンガー・フェアラーク東京)』
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(土佐誠 東北大学教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…高い圧力の衝撃波が通過した岩石や鉱物に生ずる物理的・化学的な変化の総称。天然では隕石が地表に落下したとき,その落下速度が非常に高速であるため隕石孔を作り,その周囲の岩石に短時間の大きな変形を与える。この一部が衝撃波となって周囲に広く伝わり,衝撃変成作用を引き起こす。…
…ニッケル鉄とケイ酸塩鉱物が混合した隕石で,おもなものにパラサイトpallasiteとメソシデライトmesosideriteがある。パラサイトの組織は地球の岩石には見られないもので,地球以外の天体からきたものだと最初に確認されたのがこの隕石である。…
※「隕石」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
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