ストロンチウム(読み)すとろんちうむ(英語表記)strontium

翻訳|strontium

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ストロンチウム」の意味・わかりやすい解説

ストロンチウム
すとろんちうむ
strontium

周期表第2族に属し、アルカリ土類金属元素の一つ。18世紀末スコットランドのストロンチアンの鉛鉱山で採掘されたストロンチアン石(初めは炭酸バリウムと考えられていた)から、1808年イギリスのH・デービーによって単体として取り出され、発見鉱物にちなんでストロンチウムと名づけられた。地殻中の存在量は同族カルシウムよりはるかに少ない。天青石(てんせいせき)SrSO4、ストロンチアン石SrCO3などとして産出するが、他の同族元素鉱石(重晶石BaSO4、あられ石CaCO3など)にも少量混入している。

[鳥居泰男]

製法

酸化ストロンチウムをアルミニウム粉末とともに加熱還元して蒸留する(純度99.6%)か、塩化ストロンチウムを単独または他の塩化物を添加して融解電解する。1000℃で再蒸留すると高純度のものが得られる。

[鳥居泰男]

性質

銀白色の金属で、比較的軟らかい。新しい切り口は金属光沢をしているが、空気中でしだいに錆(さ)び、灰白色の酸化被膜を生ずる。水とはかなり激しく反応し、水素を発生して水酸化ストロンチウムとなる。水銀とはアマルガムをつくる。通常、2価の陽イオンとして化合物をつくる。

[鳥居泰男]

用途

同族の他の元素に比べ用途が狭く、特殊合金や真空管のゲッター用材料が主要なものである。硝酸塩は、その深紅の炎色を利用して花火信号灯に用いられる。

[鳥居泰男]

ストロンチウム90

質量数90の放射性同位体で、核分裂生成物の主成分の一つとして原子炉内で生成する。半減期29年でβ(ベータ)崩壊して、半減期64時間のβ放射体イットリウム90に変わる。β線源およびトレーサーとして利用される。核爆発実験で生成し、大気中に放出されたものが人体に入ると、カルシウムとともに骨に集まり、長期にわたって造血臓器を冒すことになるので、人体にとってはもっとも危険な放射性核種の一つである。

[鳥居泰男]



ストロンチウム(データノート)
すとろんちうむでーたのーと

ストロンチウム
 元素記号  Sr
 原子番号  38
 原子量   87.62
 融点    769℃
 沸点    1380℃
 比重    2.6(測定温度20℃)
 結晶系   α:立方
       β:(>213℃),六方
       γ:(>621℃),体心
 元素存在度 宇宙 58.4(第30位)
          (Si106個当りの原子数)
       地殻 375ppm(第14位)
       海水 8×103μg/dm3

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ストロンチウム」の意味・わかりやすい解説

ストロンチウム
strontium

元素記号 Sr ,原子番号 38,原子量 87.62。周期表2族,アルカリ土類金属の1つ。2価の陽イオンになりやすい。 1808年に H.デービーが分離に成功し,スコットランドの町ストロンチアンにちなんで命名された。天然には天青石 (硫酸塩) ,ストロンチアン石 (炭酸塩) として産出。地殻平均含有量 375ppm,海水中の含有量 8100μg/l 。単体は銀白色の金属,面心立方構造。比重 2.6,融点 757℃。空気中ではすぐに酸化され,黄色の酸化物フィルムを表面に形成する。微粉は空気中で自然発火。酸に易溶。水,メチルアルコール,エチルアルコール,アニリンなどとも反応し,水素を発生する。赤色の花火,閃光信号に使用される。

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