日本大百科全書(ニッポニカ) 「スピレーン」の意味・わかりやすい解説
スピレーン
すぴれーん
Micky Spillane
(1918―2006)
アメリカの探偵小説作家。ニューヨーク生まれ。カンザス州立大学中退後、陸軍航空隊に入隊。第二次世界大戦後さまざまな職についたのち、1947年、『裁くのは俺(おれ)だ』でデビューする。タフな私立探偵マイク・ハマーMike Hammerが登場するシリーズ第一作。殺された戦友の復讐(ふくしゅう)を誓い、事件の捜査に乗り出すハマーの活躍を描いたものである。当時としては強烈なバイオレンスとセックスに彩られた作品であり、評論家などからは低俗な作品として酷評された。だが、東西冷戦下、「赤嫌い」をかかげる正義漢を主人公にした物語は、一般大衆から絶大な支持を集めた。以後、探偵マイク・ハマー・シリーズは、廉価なペーパーバック版で大量に刊行され、空前のベストセラーとなった。ほかに、タイガー・マンTiger Mannを主人公にしたスパイ小説『銃弾の日』(1964)などがある。人気絶頂の1953年から61年まで休筆し、62年に『ガールハンター』で復活した。さらにその後、73年から89年まで二度目の休筆をしたが、1989年に『殺す男』で復活、その後、96年には、復活第二作となる『ブラック・アレイ』Black Alleyを発表した。1995年にMWA(アメリカ探偵作家クラブ)の巨匠賞を受賞。
[吉野 仁]
『石田義彦訳『大帆船タイガー号の謎』(1984・晶文社)』▽『平井イサク訳『殺す男』(1991・早川書房)』▽『中田耕治訳『裁くのは俺だ』』▽『清水俊二訳『大いなる殺人』』▽『田中小実昌訳『銃弾の日』』▽『小笠原豊樹訳『ガールハンター』(以上ハヤカワ・ミステリ文庫)』