改訂新版 世界大百科事典 「セクロピアサン」の意味・わかりやすい解説
セクロピアサン (セクロピア蚕)
Hyalophora cecropia
鱗翅目ヤママユガ科の昆虫。大型のガで開張13~15cm。翅は赤褐色,中央部に白帯があり,中室端に大きな新月型の白紋があって,黒色で縁取られ,前翅外縁の上部には黒紋がある。北アメリカに広く分布している。年1化で,さなぎで越冬する。幼虫は緑色の芋虫で,老熟すると体長10cmに達する。多食性で,サクラそのほか多くの広葉樹の葉を食べる。成虫は春から初夏に出現する。このヤママユガは,北アメリカでごくふつうに見られ,飼育が楽で,しかも大型で取り扱いやすいため実験動物として利用される。ことに,このガを有名にしたのは,1947年にハーバード大学のウィリアムズC.M.Williamsが,昆虫の変態のなぞをとくために実験材料として使ったからである。さなぎを前後に二分したところ,前半分はガに変態したが後半分はさなぎのままであった。そこで,変態を制御している物質を探る実験を続けたところ,頭部と胸部に,それぞれ互いに関連し合ったホルモン分泌の中心のあることを発見した。脳ホルモンが胸部ホルモンを刺激し,次いで胸部ホルモンがさなぎから成虫への変態を導くということが証明されたのである。
執筆者:井上 寛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報