その他の血液凝固異常症

六訂版 家庭医学大全科 「その他の血液凝固異常症」の解説

その他の血液凝固異常症
(血液・造血器の病気)

その他の先天性凝固因子欠乏症

 止血血栓の形成に関わる凝固因子図14に示すように多数あり、それぞれの凝固因子欠乏症出血傾向を示します。いずれも責任遺伝子(それぞれの凝固因子の遺伝情報をもつ遺伝子領域)が特定されており、それぞれ原因遺伝子変異も特定されている症例が数多くあります。

 これらは、ほとんど常染色体劣性遺伝(じょうせんしょくたいれっせいいでん)フィブリノゲン異常症は常染色体優性(ゆうせい)遺伝)形式をとるので、頻度はまれで、血友病に比べて出血症状の程度も軽度です。しかし、男女両性に発症し、とくに女性での月経過多、あるいは卵巣出血が問題になることがあります。

 特徴的な出血症状を示すものに第XIII因子欠乏症があり、創部でいったん止血したのち数時間~1両日後に再出血((こう)出血)するのが特徴です。出生直後に臍帯(さいたい)出血がみられます。この出血は、フィブリノゲン欠損症、プロトロンビン欠乏症でもみられることがあります。

 一般に、凝血学的スクリーニング(PT、APTT、フィブリノゲン)検査などでそれぞれの欠乏症が疑われた場合、個々の凝固因子の活性を測定することで確定診断が得られます。同時に家系内を検索し、遺伝性かどうかを判断します。遺伝子診断が可能な場合もあります。

 一度は専門医を受診し、正確な診断を受けることが必要です。出血時の治療は、その症状を考慮したそれぞれの欠乏因子の止血レベル・血中半減期を参考に補充療法を行います(表18)。

後天的第Ⅷ因子インヒビター

 まれに、高齢者や膠原病(こうげんびょう)の患者さんに第Ⅷ因子に対する自己抗体インヒビター)が生じ、血友病に似た出血症状が生じることがあります。このような症例には、血友病インヒビター症例と同様に、バイパス療法として活性型プロトロンビン複合体あるいはリコンビナント第Ⅶa因子製剤を用い、また免疫抑制療法を併用することもあります。


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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