膠原病(読み)こうげんびょう(英語表記)collagen disease

  • (お年寄りの病気)
  • ×膠原病
  • こうげんびょう カウゲンビャウ
  • こうげんびょう〔カウゲンビヤウ〕
  • 膠原病 collagen disease
  • 膠原病(ほかの疾患に伴う肝障害)
  • 膠原病(膠原病・炎症性疾患に伴う神経系障害)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

一つの独立した疾患をさしたものではなく,結合組織が体液的変性をして,のちに線維化に陥り,瘢痕化するような種々の疾患群を総括的に呼んでいる。 1943年,クレンペラーによって提唱された病理学的な疾患概念である。これに属する病気には,結節性動脈周囲炎全身性紅斑性狼瘡 (全身性エリテマトーデス) ,汎発性強皮症皮膚筋炎リウマチ熱慢性関節リウマチの6疾患がある。もともとアレルギー疾患と呼ばれた病気に属し,最近は,これら疾患の自己免疫病的性格も次第に明らかにされてきている。

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

免疫システムが異常を起こし、自分自身を攻撃するようになる病気の総称関節リウマチSLE全身性硬化症などがあり、発熱発疹関節痛など症状も人それぞれ。腎機能低下など重い内臓疾患を伴う場合もある。原因は不明で治療方法は確立しておらず、原病のうちいくつかの病気は、国が特定疾患治療研究事業の対象としている。

(2010-08-21 朝日新聞 朝刊 青森全県 1地方)

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百科事典マイペディアの解説

全身の結合組織基質,ことに膠原繊維の変性を主病変とする急性ないし慢性の系統的疾病概念として,1942年P.クレンペラー〔1887-1964〕らにより主唱されたもの。診断名でなく一群の疾病の概括というべきものである。代表的かつ古典的なものは全身性エリテマトーデス,汎発性強皮症リウマチ熱リウマチ様関節炎,多発性動脈炎,皮膚筋炎の6種で,リウマチ熱を除けばいずれも慢性の難病である。膠原病の疾病概念はその後次第に拡張され,血栓(けっせん)性血小板減少性紫斑病,結節性紅斑,悪性腎硬化症,潰瘍(かいよう)性大腸炎など十数種の疾病群をも包括するという見解もあり,また,膠原病という命名自体が膠原繊維に原発する疾病群ではないという点から不適であり,結合組織病の名称がより適しているという見解もある。これら一群の疾病の本態,発症機構については,なんらかの引金となるものが働いて,自己抗原となるものができ,これに対する自己抗体が作られ,この抗原抗体反応によって結合組織に炎症を生じ,組織が破壊されるという発症機構が考えられ全身性自己免疫疾患とも呼ばれる。引金となるものについて,遺伝因子と環境因子の両面から研究されている。治療には副腎(ふくじん)皮質ホルモンが非常に有効で,免疫抑制剤もかなり効果がある。いずれも対症療法で長期の治療が必要。全身性エリテマトーデスほか膠原病の多くは厚生省の難病に指定されている。→自己免疫
→関連項目アレルギー反応維持療法血漿交換虹彩炎シェーグレン症候群人工透析多発性筋炎ネフローゼ副腎皮質ホルモン剤レイノー病

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世界大百科事典 第2版の解説

1941年にクレンペラーP.Klempererが提唱した疾患。病理学的に結合組織にフィブリノイドfibrinoid変性がみられる疾患という定義がなされ,全身性エリテマトーデス,慢性関節リウマチ皮膚筋炎または多発筋炎,強皮症(全身性進行性硬化症),結節性動脈周囲炎,リウマチ熱の6疾患が代表的な膠原病とされた。その後,病理学的にもフィブリノイド変性という概念がきわめてあいまいなものであり,膠原繊維にのみ変化がおこるものではないところから,結合織疾患connective tissue diseaseとよぶほうが正しいとされ,国際的にはそのようによばれることが多い。

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大辞林 第三版の解説

人体の全身の結合組織(膠原組織)に広範な炎症と変性を来す疾患群の総称。全身性エリテマトーデス・関節リウマチ・リウマチ熱・皮膚筋炎・強皮症・多発性動脈炎など多くの疾患が含まれる。原因は不明であるが、何らかの免疫現象が関与していると考えられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

1942年にクレンペラーKlempererが、病理組織学的に全身の結合組織にフィブリノイド変性(膨化、壊死(えし))という共通の変化がみられる一群の疾患を結合組織の系統的疾患として一括し、膠原病と名づけたもので、一つの病名ではない。結合組織病connective tissue diseaseという名称も使われる。
 クレンペラーは膠原病に、リウマチ熱、関節リウマチ、多発動脈炎、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、皮膚筋炎の6疾患を含めたが、シェーグレン症候群や、最近新しい疾患単位として提唱された混合性結合組織病も、膠原病に含めてよいものである。近縁疾患としては、ベーチェット病、結節性紅斑(こうはん)、ウェーバー‐クリスチャンWeber-Christian病、脈なし病などがある。
 膠原病に属する疾患には臨床的にそれぞれ特有の症状があり、治療、経過、予後にも違いがあるが、いずれも全身の諸臓器組織を侵しうる疾患であり、次のような類似点もある。
(1)疾患によって差はあるが一般的に女性に多く、年齢的には妊娠可能年齢に多い。
(2)原因不明の発熱がみられ、高熱のことも微熱のこともあるが、抗生剤に反応せず、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤によって解熱する。
(3)多発性の関節痛ないし関節炎、筋肉痛がある。
(4)紅斑や皮下結節がみられる。
(5)レイノー症状がみられる。
(6)検査では、赤沈促進、CRP陽性、血清γ‐グロブリン増加など炎症を示す所見、またリウマチ因子や抗核抗体などの自己抗体の出現、梅毒血清反応の偽陽性などが認められる。
(7)遺伝的背景としては、血縁者に膠原病や自己免疫疾患を有することが少なくない。
 これらの膠原病では、関節や筋肉の障害が機能に関する予後を左右し、心・腎・肺・中枢神経などの病変が生命に関する予後を左右するが、治療の進歩により生命に関する予後は以前よりよくなっている。[高橋昭三]

重複症候群

オーバーラップ症候群overlap syndromeともいい、膠原病の6疾患のうち診断が確実なものが二つ以上重複している場合をいう。実際には関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、皮膚筋炎(多発性筋炎)の4疾患の重複例がほとんどで、全身性エリテマトーデスと全身性強皮症との重複がもっとも多い。重複症候群の予後は、単独疾患それぞれのものよりも悪い。[高橋昭三]

混合性結合組織病

1972年にシャープSharpらが新しい疾患単位として提唱したもので、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、多発性筋炎(皮膚筋炎)にみられる症状があり、血清中に高値の抗RNP(リボ核酸タンパク)抗体が単独で認められる疾患である。その臨床像は重複症候群と異なり、不完全重複ともいうべきもので、ソーセージ様手指を伴う手背腫脹(しゅちょう)、レイノー症状、関節痛・関節炎がおもな症状である。そのほか、筋肉痛・筋力低下、紅斑、リンパ節腫脹なども認められ、発熱をきたすこともある。中年女性の罹患(りかん)が多く、女性が80%を占める。ステロイド薬によく反応し、予後はよい。[高橋昭三]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 人体の結合組織中の膠原繊維に特殊な変性の認められる一群の病気の総称。リウマチ熱・慢性関節リウマチ・全身性エリテマトーデス・全身性硬化症・皮膚筋炎・多発性動脈炎など。自己免疫が原因と考えられている。一九四二年、米国の医師クレンペラーが命名。

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内科学 第10版の解説

(3)膠原病
 膠原病に伴う肝障害の多くは軽症である.膠原病自体による障害,ステロイド剤による脂肪肝,免疫抑制薬や抗炎症薬による薬物性肝障害,膠原病類似疾患の合併による障害,アミロイドーシスのような膠原病に続発した病態による障害などがある.
a.全身性エリテマトーデス
(systemic lupus erythematosus:SLE) SLEでは30~60%の症例に血清トランスアミナーゼや胆道系酵素の上昇,20~50%に肝腫大がみられる.肝障害の原因はSLE自体によるものとステロイドなどの治療薬によるものが多い.SLEの肝組織像は,脂肪肝と非特異的反応性肝炎(non specific reactive hepatitis:NSRH)がそれぞれ40%程度を占め,活動性肝炎や肝硬変は少ない.まれに血管炎や結節性再生性過形成(nodular regenerative hyperplasia:NRH)の像がみられる.肝障害を伴ったSLEとの鑑別を要する疾患としてLE細胞現象が陽性の自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis:AIH)があげられる.AIHはSLEよりもガンマグロブリン値が高く,抗平滑筋抗体が陽性で,抗ds-DNA抗体が陰性の症例が多い.AIHでは形質細胞浸潤と肝細胞壊死を伴う慢性活動性肝炎が認められるが,SLEの肝病変は軽度で門脈域に非特異的なリンパ球浸潤を伴う非特異的反応性肝炎を呈する.
b.関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)
 関節リウマチの20~50%に肝障害を認める.肝組織の検討では,非特異的反応性肝炎を40%に,脂肪肝を20%に認め,肝アミロイドーシスを合併することもある.関節リウマチに自己免疫性肝炎や原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis:PBC)が合併することは少ないが,AIHとPBCにおける関節リウマチの合併は,それぞれ10%と5%程度とされている.関節リウマチ,脾腫,白血球減少を3主徴とするFelty症候群では高率に肝障害がみられ,AST,ALTやALP値の上昇などを40~60%に,肝腫大を70%に認める.門脈圧亢進症が出現することも比較的多く,組織像では門脈域の線維化を伴う結節性再生性過形成を認める症例が多い.発熱,皮疹,関節痛を3主徴とする成人Still病においても肝障害が高率にみられ,肝腫大を50%,脾腫大を65%,肝障害を85%に認める.
c.Sjögren症候群(SjS)
 Sjögren症候群の10~30%に肝障害がみられ,約1/4の症例に脾腫大を伴う.Sjögren症候群からみれば原発性胆汁性肝硬変や自己免疫性肝炎の合併は低率であるが,原発性胆汁性肝硬変と自己免疫性肝炎におけるSjögren症候群の合併は比較的高く,それぞれ20%と10%であると報告されている.
d.全身性強皮症(systemic scleroderma)
 全身性強皮症は皮膚硬化が全身に及ぶ汎発型と手指に限局する限局型に分類される.消化管病変を高率に認めるが,肝障害の頻度は低い.限局型のCREST症候群ではPBCの重複が注目されており,重複例では抗セントロメア抗体の陽性率が90%以上ときわめて高い.
e.結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa:PN)
 剖検ではPNの約半数に肝動脈の病変を認めるが,臨床的に肝障害をきたすことはまれである.しかし,血管炎により動脈瘤を形成し,破裂や肝梗塞を起こし重症化することがある.[西口修平]
(1)膠原病(collagen disease)
 膠原病は自己の構成成分に対する免疫寛容が破綻して生じる全身性炎症疾患であり,身体のあらゆる部位にある結合組織を共通の炎症の場とする.中枢または末梢神経障害を呈する頻度が高く,ときに神経症状のみが前景に出る場合もある.神経組織における自己抗体を介した直接の炎症,血管炎を介した虚血性病変,または内臓障害に伴う二次的影響などが症状発現の機序として考えられる.近年,新規免疫抑制薬や抗サイトカイン療法としての生物学的製剤の導入により,膠原病に対する治療法が大きく変化している.
a.全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythema­tosus:SLE)
 全身性エリテマトーデスの25~75%に神経障害を合併するとされ,神経障害は全身性エリテマトーデスの3大死因の1つである.従来はSLE関連の中枢神経症状をCNS lupusとよんでいたが,最近は末梢神経障害を含めてneuropsychiatric SLE(NPSLE)とよぶ傾向にある.中枢神経障害は神経症候群と精神・神経心理学的症候群に大別される.前者は無菌性髄膜炎,脳血管障害,脱髄病変,良性頭蓋内圧亢進症を含む頭痛,不随意運動(おもに舞踏病),痙攣からなる.脳血管障害の発現には抗リン脂質抗体症候群の関与が重要であり,その際には静脈洞血栓症の合併に注意する.後者では急性錯乱状態,不安・気分・認知障害が出現する.最近,精神・認知機能障害の発現にはグルタミン受容体の一種であるN-methyl-d-aspartate受容体(NMDAR)に対する抗体の存在が注目されている.一方,副腎皮質ステロイド薬で治療中に上記症状が出現する場合はステロイド精神病(steroid psychosis)との鑑別が重要である.脊髄病変としては横断性脊髄炎を,末梢神経障害では多発神経炎や多発単神経炎を合併する.髄液では細胞数,総蛋白濃度,IL-6,IL-8,IFN-αなどの増加がみられることが多い.脳波ではびまん性徐波・棘波などの異常が高頻度に出現し,頭部CTでは慢性例を中心に硬膜の肥厚,基底核部を中心とする石灰化がみられる.またMRIでは症状に対応して種々な浮腫性,脱髄性病変が検出される.血清中の抗DNA抗体や補体はNPSLEの重症度とは関連しないが,抗Sm抗体は器質性精神障害の患者で高値を示す.また血清中の抗リボソームP抗体の存在は本病態の診断に有用とされている.治療はメチルプレドニゾロン1 g/日,3日間のパルス療法や,経口プレドニゾロン1.0 mg/kg/日の投与を行う.難治例ではシクロホスファミドのパルス療法その他の免疫抑制薬を併用する.【⇨10-4】
b.抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid antibody syndrome:APS)
 抗リン脂質抗体症候群は若年者の脳血管障害の原因としては最も多く,50歳以下の深部静脈血栓症の10%に抗リン脂質抗体(antiphospholipid antibody :aPL)が陽性とされる.また原因不明の習慣性流産患者にも高率にaPLが検出される(原発性抗リン脂質抗体症候群).自己免疫疾患に合併する場合は二次性抗リン脂質抗体症候群といわれ,その基礎疾患のほとんどが全身性エリテマトーデスである.全身性エリテマトーデスで抗リン脂質抗体症候群を示すものは10~20%とされる.抗リン脂質抗体症候群では種々な部位に再発性血栓症を生じ,血管炎の関与なしに血栓形成がみられる.脳血管障害が90%以上を占め,中大脳動脈での血栓形成が多いが,静脈洞血栓症も併発する.微小血管障害によるてんかん,難治性頭痛,認知機能低下,舞踏病,横断性脊髄障害などもみられ,特発性頭蓋内圧亢進症にも本病態が関与している.
 血栓症に関連するaPLの抗原はリン脂質に結合したβ2-GPIであり,β2-GPIの凝固抑制機能がaPLでブ ロックされて凝固系が亢進し,血栓形成を生じると考えられる.治療は副腎皮質ステロイド,免疫抑制薬に加え,血栓症に対してワルファリンによる抗凝固療法,抗血小板療法が行われる.【⇨10-10】
c.Sjögren症候群
 Sjögren症候群は涙腺・唾液腺などの外分泌腺組織が浸潤リンパ球で傷害され,乾燥症候群を生じる.神 経系においても,中枢神経,末梢神経,筋に広く病変を生じる.末梢神経障害の合併頻度が高く,脳神経では三叉神経障害を,四肢では感覚失調性ニューロパチー,有痛性ニューロパチーの像を呈する.感覚失調性ニューロパチーの責任病巣は後根神経節と考えられ ている.筋病変は本症候群と皮膚筋炎/多発筋炎の重複と位置付けられる.中枢神経系合併症としては脊髄炎,無菌性髄膜炎がある.この中で注目すべきは視神経炎・脳脊髄炎の合併であり,その頻度は5~30%とされている.症状は視力障害,複視,顔面神経麻痺などの脳神経症状,失調や構音障害などの小脳症状,下肢の麻痺と感覚障害などの横断性脊髄障害であり,これらの症状が亜急性から慢性に出現して,再発寛解や慢性進行性の経過を示すことから,多発性硬化症との鑑別が常に問題となる.本病態を伴うSjögren症候群患者では血清中に抗アクアポリン-4抗体が高率に検出されており,中枢神経系に限局した脱髄疾患である視神経脊髄炎(neuromyelitis optica:NMO)との異同が論議されている.
 治療は副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン30~60 mg/日)投与を行うが,中枢神経障害にはステロイドパルス療法を,末梢神経障害の難治例には免疫グロブリンの大量静注療法(IVIg)が試みられている.【⇨10-3】
d.関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)
 本疾患では炎症で変形した関節病変により手根管症候群,腓骨神経障害などの絞扼性神経障害を生じる.また重篤な合併症として,頸椎の環軸関節の亜脱臼による頸髄損傷,リウマチ性髄膜炎があり注意を要する.前者は発症早期に外科的な関節固定を必要とする.また後者は四肢の関節病変の重篤度とはあまり関連がなく発症し,脳軟膜における血管炎が病態を形成すると考えられている.さらに関節リウマチに全身性の壊死性血管炎を伴う重篤な場合は,悪性関節リウマチといわれる.多発単神経炎による四肢麻痺が目立ち,検査所見では血清中のリウマトイド因子(RF)高値,低補体価,免疫複合体陽性,CRP高値などがみられる.治療は十分な抗リウマチ薬の投与に加えて副腎皮質ステロイド・免疫抑制薬の積極的投与が必要である.【⇨10-2-1),10-2-2)】
e.リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica:PMR)
 50歳以降に発症することの多い原因不明のリウマチ性疾患であり,後頸部筋,肩甲帯筋,腰帯筋群に著明な筋痛とこわばりが1カ月以上続く.このため髄膜炎と誤認されうる.筋萎縮・筋力低下はみられない.発熱,疲労感,食欲低下,体重減少などを伴う.30%程度に側頭動脈炎を合併する.CRPの高値,100 mm/時以上の赤沈亢進,IL-6著増,フィブリノゲン高値などがみられるが,CK,アルドラーゼなどの筋原性酵素の上昇はなく,筋電図・筋生検は正常である.
 治療は側頭動脈炎の合併がない場合,プレドニゾロン10~20 mg/日程度の低用量で筋痛は数日以内に劇的に改善する.しかし同薬剤の減量・中止による再燃例が多く,長期間にわたって少量のステロイド薬の投与が必要である.なお,側頭動脈炎を合併している場合は,眼動脈の炎症による視力低下を防ぐ目的で,初期からステロイドパルス療法を含めた大量ステロイド療法を行う.【⇨10-2-4)】
f.全身性強皮症(scleroderma,systemic sclerosis:SSc)
 神経筋の合併症は比較的まれであるが,20%前後に末梢神経障害を生じる.末梢神経障害は絞扼性障害が多いとされるが,虚血性の要因で生じる可能性も考えられる.筋症状はしばしばみられる合併症で,多くは,筋力低下やCKの上昇を伴わず,筋生検でも筋周膜の線維化は認めるものの,筋細胞壊死や炎症細胞浸潤の所見は乏しい.多発筋炎の重複症候群と思われる筋力低下の目立つ例もある.治療は血管拡張薬,d-ペニシラミン,または少量のステロイド薬が使用される.【⇨10-5】
g.混合性結合組織病(mixed connective tissue disease:MCTD)
 混合性結合組織病は,全身性エリテマトーデスと全身性強皮症および多発筋炎/皮膚筋炎の症状が同時または経過とともに同一患者に出現し,血清中に抗U1 snRNP 抗体が検出される疾患である.Raynaud現象が初発症状であることが多く,手指に限局した皮膚硬化や浮腫状に腫脹したソーセージ様指は全経過を通じてみられる.関節炎は関節破壊を伴わない軽度な場合が多い.その他,全身性エリテマトーデス様皮疹,発熱,肝脾腫,筋痛・筋力低下,リンパ節腫脹,漿膜炎,白血球減少,貧血,食道蠕動不良,無菌性髄膜炎,三叉神経痛などがみられる. 抗U1 snRNP抗体,特にfirst stem-loopの70 kDaに反応する抗体がMCTDの診断に特異的マーカーとなる.検査データとしてはその他,高ガンマグロブリン血症,血中免疫複合体の存在,補体価の低下,リンパ球減少,RF陽性などを認める.
 治療は症状に応じて選択する必要があるが,末梢循環改善薬,血小板凝集抑制薬,非ステロイド系抗炎症薬,関節炎・筋炎などの急性炎症症状に対しては副腎皮質ステロイドを使用する.【⇨10-7】[池田修一]
■文献
膠原病に伴う神経・筋障害.日本内科学会雑誌,99(8), 2010.
膠原病と神経疾患—基礎から臨床まで.Clinical Neuroscience, 28(2), 2010.

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六訂版 家庭医学大全科の解説

膠原病とは

 クレンペラーによって提唱された膠原病は、病理形態学的に全身の膠原線維(こうげんせんい)にフィブリノイド変性を来し、その原因として自己免疫現象が考えられている疾患群です。

 全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性硬化症(ぜんしんせいこうかしょう)(PSS)、皮膚筋炎(ひふきんえん)(DM)、関節リウマチ(RA)、リウマチ熱(RF)、結節性多発性動脈炎(けっせつせいたはつせいどうみゃくえん)(PN)の6疾患を古典的膠原病といいます。

 現在ではこれに加えて、リウマチ性多発筋痛症側頭動脈炎(そくとうどうみゃくえん)巨細胞性動脈炎(きょさいぼうせいどうみゃくえん))、多発性筋炎(たはつせいきんえん)シェーグレン症候群混合性結合組織病(MCTD)、重複症候群、アレルギー性肉芽腫性血管炎(にくげしゅせいけっかんえん)ウェゲナー肉芽腫症などの類縁疾患を含めて扱うのが一般的です。本項では、高齢者によくみられるものの特徴を解説します。

内藤 通孝

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

世界大百科事典内の膠原病の言及

【エリテマトーデス】より

膠原病(こうげんびよう)に属する疾患で,その代表的なものと考えられている。10~20歳代の女性に多く,男性にはまれである。…

【血管炎】より

…血管に炎症性あるいは増殖性の変化がおこる疾患は異質のグループからなり,あるものは原因もはっきりしていて,かなり一定した症状を呈する特異性疾患であり,他のものは原因もはっきりせず,症状も千差万別である。 血管炎という概念は広いカテゴリーで,大動脈炎症候群(高安病)やバージャー病,あるいはベーチェット病にみられる血管病変のような大型の血管炎から,結節性動脈周囲炎,悪性関節リウマチ,紅斑性狼瘡(ろうそう),強皮症などの膠原(こうげん)病,限局性の壊死性動脈炎,結節性紅斑,硬結性紅斑,非化膿性皮下脂肪組織炎などにみられる小型の血管炎まで含まれ,これらの疾患ではいずれも血管炎が病因上重要な役割を演じているものと考えられる。また,血小板非減少性紫斑病,とくに類アナフィラキシーあるいはアレルギー性紫斑病では,病理組織学的に皮膚や臓器の小血管の壊死性病変が特徴とされている。…

【自己免疫】より

…表に代表的な自己免疫疾患を挙げる。全身性の自己免疫疾患は,古くは結合組織の増生を特徴とする膠原病(こうげんびよう)という範疇(はんちゆう)に入れられていた。しかし近年,それらの成因が研究されてきて,少なくとも部分的には自己免疫が関与していると考えられるようになってきたが,なお不明な点も多い。…

※「膠原病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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