日本大百科全書(ニッポニカ) 「凝固因子欠乏症」の意味・わかりやすい解説
凝固因子欠乏症
ぎょうこいんしけつぼうしょう
血液を凝固させる因子が欠乏しているため、出血しても止血しにくくなる疾患。血管が破綻(はたん)をおこすと出血が始まるが、やがて血液が固まって止血する。血液は、血管の中を流れている場合は固まることはないが、ひとたび血管の外に出ると凝固する。この血管外で凝固することが、出血時の止血機構としてたいせつなものであり、止血に関与しているのは、血管とその周辺組織、血小板と血液凝固因子の三者である。このうちのどれに異常があっても止血しにくくなる。血小板に異常があると、出血時間が延長するが、血液凝固因子が欠乏したときには、血液凝固時間が延長する。
血液凝固因子には12種類あり、Ⅰフィブリノゲン、Ⅱプロトロンビン、Ⅲ組織トロンボプラスチン、Ⅳカルシウムイオン、Ⅴ不安定因子、ⅦSPCA、Ⅷ抗血友病因子、Ⅸクリスマス因子、Ⅹスチュワート・パワー因子、ⅪPTA、Ⅻヘッグマン因子、ⅩⅢフィブリン安定因子であり、Ⅵは欠番である。このなかでもっとも多い欠乏症は、第Ⅷ、第Ⅸ因子の先天性欠乏による血友病である。第Ⅷ因子欠乏は血友病A、第Ⅸ因子欠乏は血友病Bといわれ、伴性潜性遺伝形式で遺伝し、男性が発病し、女性は保因者となる。生後1、2年たったころから関節内、筋肉内に出血して関節、筋肉の硬直をおこす。このほかに、まれではあるが、それぞれの因子の欠乏症がある。また、肝硬変とか、閉塞性黄疸(へいそくせいおうだん)、血栓症の場合にも、血液凝固因子の産生が低下したり、過剰に使用されたりして減少する。
[伊藤健次郎]