日本大百科全書(ニッポニカ) 「タツノイトコ」の意味・わかりやすい解説
タツノイトコ
たつのいとこ / 竜従兄弟
bastard seahorse
[学] Acentronura gracilissima
硬骨魚綱トゲウオ目ヨウジウオ科に属する海水魚。日本では伊豆諸島、小笠原諸島、相模(さがみ)湾以南、山口県の日本海側など、ほかにベトナム、ニュー・カレドニアなど太平洋に分布する。尾びれがなくて、尾部で他物に巻き付くことができること、育児嚢(のう)は完全な袋状であることなどでタツノオトシゴ類の仲間にされていたが、頭が体と直角に曲がらずほとんどまっすぐで、冠状突起が発達しないことなどで、最近の研究ではヨウジウオの仲間に入れられている。体が細長く伸びてヨウジウオ類の特徴をもつが、尾部の先端が曲がる。背びれの基底は著しく盛り上がる。体には多くの皮弁があるが、数や大きさにかなりの個体変異がある。体色は黄褐色、茶褐色など生息場所によって著しい変異がある。浅い岩礁域の砂底や転石に生えている海藻類に巻き付いてすむ。雄には育児嚢があり、その中にいる稚魚は尾びれをもち、産出後しばらくは浮遊生活をする。体長は10センチメートルほどにしかならない小型種である。
[尼岡邦夫]