日本大百科全書(ニッポニカ)「伊豆諸島」の解説
伊豆諸島
いずしょとう
東京都に属する火山列島。伊豆半島の南東部からほぼ南北方向に太平洋上に並ぶ島嶼(とうしょ)。主島の伊豆七島(大島、利島(としま)、新島(にいじま)、神津島(こうづしま)、三宅島(みやけじま)、御蔵島(みくらじま)、八丈島(はちじょうじま))のほか、さらに南の青ヶ島、ベヨネース列岩、須美寿島(すみすじま)、鳥島(とりしま)、孀婦岩(そうふいわ)や、属島の鵜渡根(うどね)島、地内(じない)島、式根島(しきねじま)、祗苗(ただなえ)島、恩馳(おんばせ)島、大野原島、藺灘波(いなんば)島、八丈小島などを含む。総面積297平方キロメートル、人口約3万。大島、三宅、八丈の3支庁、2町6村に分かれている。
[菊池万雄・諏訪 彰]
自然
地形、地質から2系統に分けられ、大島、利島、三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島、鳥島は黒っぽい玄武岩~安山岩からなる複式の成層火山。新島、式根島、神津島は白っぽい流紋岩である。1952~1953年(昭和27~28)に海底噴火で出没した新火山島の明神礁(みょうじんしょう)は石英安山岩。大島三原山、新島、神津島、三宅島、八丈西山、青ヶ島、明神礁、須美寿島、鳥島は活火山。各島の最高標高は、大島758メートル、利島508メートル、式根島109メートル、神津島572メートル、三宅島814メートル、御蔵島851メートル、八丈島854メートル、青ヶ島423メートルであるが、近海が2000メートルを超える深海であるから、基底の海底からの比高は3000~4000メートル級の火山といえる。海岸線は、新島、式根島、神津島は台地状火山地形のため複雑であるが、利島、御蔵島、青ヶ島は周囲が断崖(だんがい)絶壁で諸島中もっとも船着きの悪い島である。近海を黒潮が流れるため、気候は高温多雨の亜熱帯性気候で、植生にも特色がみられる。ことに利島にはツバキ、御蔵島にはクワやツゲの大木が多い。
[菊池万雄・諏訪 彰]
沿革・産業
これらの島々は古くは伊豆国に属したが、近世には江戸幕府の直轄地となり、明治に入り所管が転々と変わったが、1876年(明治9)静岡県編入を経て、1878年東京府に編入された。また、中世から近世には伊豆七島は流刑地となり、近世には多くの流罪人が送り込まれ、島の社会に影響を与えた。現在、東京、熱海(あたみ)、下田(しもだ)から船便のほか、大島、八丈島へは羽田空港、大島、新島、三宅島、神津島へは調布飛行場からの航空便もあるが、一般には交通に恵まれていない。それが産業に影響し、古くから農林水産依存のみのところへ、離島という隔絶性が、つねに生産物の商品化を阻み困難なものにしてきた。大島の酪農、椿油(つばきあぶら)、新島の近世以来の伝統産業のくさや、八丈の名を生んだ古くは八丈絹とよばれた黄八丈(きはちじょう)など特産はあるが、生計を維持するほどのものには成長していない。しかし最近この地域は、火山景観の変化と、豊富な植物相、黒潮の海に臨む海岸美などの自然美に加えて、中世以来の歴史の跡が至る所にみられるなど、観光資源として価値が認められて、1964年(昭和39)富士箱根伊豆国立公園に編入され、数多くの観光客が訪れる所となっている。
[菊池万雄・諏訪 彰]