育児嚢(読み)いくじのう(英語表記)marsupium; brood pouch

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

育児嚢
いくじのう
marsupium; brood pouch

カンガルーなど有袋類腹部にある袋。この袋は皮膚のひだからできたもので,内部には数個の乳頭が並ぶ。これら有袋類では胎児は発生のごく初期に出産され,生れたばかりの子は育児嚢内で乳頭を口に含みつつ成長する。単孔類ハリモグラでは生殖時期に一時的に育児嚢類似の孵卵嚢が生じる。このほか,無脊椎動物にみられる育房,タツノオトシゴの雄などにみられる卵嚢も育児嚢と呼ぶことがある。

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百科事典マイペディアの解説

育児嚢【いくじのう】

カンガルーなど,多くの有袋類の雌の腹部にある皮膚のひだでできた嚢。内部の腹面には数個の乳首がある。胎児は一般にごく早期に産出され,自力で育児嚢に入り,乳首に吸いついて育つ。またタツノオトシゴやヨウジウオの雄の腹部にある孵卵(ふらん)腔をいうこともあり,雌はこの中に卵を産みつける。この場合栄養の供給は行われない。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

育児嚢
いくじのう

胎児や幼生を育てるために体の一部に生じたふくろをいう。有袋類では、胎児は発生の早期に産出されるので、雌親の腹を這(は)って、腹部の皮膚によって生じた育児嚢に達し、その中で乳頭を口に含んだまま発育する。骨盤の前方に袋骨(上恥骨)があり、育児嚢を支えている。単孔類のハリモグラでは、生殖期に一時的に雌の腹部中央に育児嚢を生じ、乳嚢がその内部にある。卵はここで孵化(ふか)し、子はここで育てられる。孵卵嚢ともいう。魚類のタツノオトシゴやヨウジウオでは、雌は、雄の腹部に発達する育児嚢(卵嚢ともいう)の中へ産卵し、孵化した稚魚はふくろから出たり入ったりして成長する。甲殻類等脚目のフナムシやダンゴムシの雌は、生殖期に胸部基部に扁平(へんぺい)葉状の覆卵葉を生じ、これと腹部との間の育児嚢(育房、育嚢ともいう)に受精卵を産む。卵はここで孵化し、幼体となってから雌親を離れる。[川島誠一郎]

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