改訂新版 世界大百科事典 「タボン洞窟群」の意味・わかりやすい解説
タボン洞窟群 (タボンどうくつぐん)
Tabon Caves
フィリピン共和国,パラワン島の中部西岸,ケソン地区のリプウン岬一帯に所在する洞窟遺跡群。かつて島であった同岬で29の石灰岩洞窟が発見され,1962年以来,フィリピン国立博物館の手で調査が行われ,フォックスR.B.Foxにより概報が公刊されている。旧石器時代以降,近世に至るさまざまな時代のものがあるが,新石器時代以降,宋・元の中国陶磁を伴うものまでの長期間にわたる甕(骨壺)棺葬は,大半の洞窟でみられる。タボン洞窟では旧石器時代後期とされるチャート製,直接打法の剝片石器が多数発見され,それらは深さなどからⅠA,ⅠB,Ⅱ~Ⅴの6群に細分される。炭素14法による年代は,9250±250B.P.(ⅠB)から30500±1100B.P.(Ⅳ)の数値を示す。なお洞窟の最下部は未発掘である。グリGuri洞窟には前5000~前2000年ころの貝塚がみられ,その全般から豚や鹿などの動物骨とともに剝片石器が出土し,その上半から石刃(ブレード)も出土し石器技術の革新を示す。新石器時代の甕棺葬が発見されたのはバトゥ・プティBatu Puti,リヤンLiyan,ニイペット・ドゥルドゥクNgipet Duldug,マヌングルMannunggulの諸洞窟で,他は金属期時代以降の甕棺葬である。
執筆者:重松 和男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報