ダイモン(英語表記)daimōn

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ダイモン」の意味・わかりやすい解説

ダイモン
daimōn

ギリシア語で「超自然的霊的存在」「神」を意味する。ホメロスの世界では人間に対して不思議な仕方で現れ,誕生や運命の変転について予告するなんらかの神的存在をいい,オリンポスの神々のような人格的形姿をとらない。ヘラクレイトスは「人間各自の性格はその人間のダイモンである」としてこの思想に反対した。またエンペドクレスにとってダイモンは霊魂の別称であった。ソクラテスのダイモンはおおむね特定の行為を避けることを勧告する点でなおアルカイックな宗教信仰の形態を残すが,一貫して非人格的である。こうしてダイモンは次第に超越的性格を失い,個人個人に一生つきまとって運命を左右するよき霊ないしあしき霊と考えられるようになり,神性は低下した。プラトンはダイモン (ただし複数) を神と人との仲介者として述べ,クセノクラテスは神性と人性の混合としている。フィロンギリシア哲学におけるダイモンをイスラエルの宗教的伝統における天使と同一視していたが,異教の神を悪魔的存在とみなすキリスト教ではいわゆるデーモン的な意味合いで用いられた。

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