改訂新版 世界大百科事典 「ダーイラ」の意味・わかりやすい解説
ダーイラ
dā'ira[アラビア]
西アジアを中心として東西に広く伝播している枠太鼓ないしタンバリンの種類。ダーイラとはアラビア語で〈円い〉ものを指す。通常直径35~40cm,深さ約5~7cmのクルミ,ポプラ,松などの木枠にヤギ革を1枚張ったもの。枠の内側に指輪のような金属の輪を50個内外つるして,革の振動につれてジャラジャラと鳴るようにくふうされている。この一面太鼓は奏者が左手で枠の下部を支えて,あたかも盾のごとく前に構え,両手の指先で膜面をたたきさまざまな音色とリズムを作り出す。
この太鼓はやはりアラビア語でドゥッフ(ダッフdaff)またはタールṭār,トルコ語でデフdef,マズハルmazharと呼ばれるものと同種であるが,ダーイラの名称はイラン,パキスタン,アラブ諸国で一般的である。またグルジアではダイラdaira,ウズベキスタンやタジキスタン,アフガニスタンではドイラdoira,また東ヨーロッパのアルバニアやマケドニアではダイレdaireの呼称で知られる。概して民俗音楽・舞踊の伴奏に用いられることが多い。
執筆者:柘植 元一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報