ウラル語族のフィン・ウゴル語派に属し,モルドビン語とともにボルガ・フィン語を構成する。ボルガ川の中流カザン市の北西部で話されていて,言語人口は67万0900(1989),うち約8割が母語としている。この半分がマリ・エル共和国に住む。ロシアではマリ語Mariと呼ばれている。西方の山地方言と北方の牧地方言,それにバシコルトスタン共和国での東方言に分かれる。山地方言には完全な母音調和が見られ,牧地方言にも唇の調和が働いている。例:山地pört-əštə 牧地pört-əštö〈家の中に〉,山地čodrá-štə^ 牧地čodrá-ste〈森の中に〉(čは[],šは[ʃ],ə^は後舌の[ə])。名詞は13格に変化し単複の別があり,所有語尾をとる(kidə-ske-m〈手・から・私の〉)。動詞は時制と人称で変化し五つの法をもつ。また否定形は否定動詞による。例:luda-m〈私が読む〉,om lud〈私は読まない〉。動詞は文末に立つ。例:üdər knigam ludeš。〈少女が・本を・読む〉。マリ人のI.S.ガルキンによりこの言語の史的研究がなされている。
執筆者:小泉 保
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ウラル語族はまずフィン・ウゴル語派とサモエード諸語に大別される。さらにフィン・ウゴル語派は,バルト・フィン諸語Balto‐Finnic(フィンランド語,カレリア語,エストニア語,ボート語ほか)やモルドビン語,チェレミス語(マリ語),ボチャーク語(ウドムルト語),ジリャン語(コミ語)などを含むフィン語派Finnicと,ハンガリー語,ボグル語(マンシ語),オスチャーク語(ハンティ語)などを含むウゴル語派Ugrianに区分される(図)。これら言語の間には基本的語彙に厳密な音韻の対応が見られる。…
…また学問の研究とともに,1919年以後の10年間は,新たに独立した母国のために活躍し,日本公使(1919‐30)をつとめた。 幼少の時代から種々の言語に関心を覚え,大学卒業後は,語学の教師をしていたが,学問上の労作は,チェレミス語の実地踏査の結果を整理した発表に始まる。その後,おびただしい研究の発表があるが,それらはすべて数次にわたるアジアの諸地方の研究旅行および滞在の成果である。…
※「チェレミス語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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