モルドビン語 (モルドビンご)
Mordvin
ウラル語族のフィン・ウゴル語派の中でフィン語系に属し,チェレミス語(マリ語)とともにボルガ・フィン語を形成する。ボルガ川の中流にあるカザン市の南側でモルドビア共和国を中心に広い範囲で話されている。言語人口は115万4000(1989)で,そのうちの約7割が母語としている。エルジャErza方言とモクシャMoksha方言に分かれているが,相互に理解が困難であるため別々に標準文語を定めている。名詞は12格に変化し定語尾をもつ。例:kudo-s'〈家・その〉。名詞も形容詞も述語として変化する。例:loman’〈人〉,loman'-an〈私は人である〉。動詞には不定目的をとる主体活用と,一定の目的をとる対象活用とがある。例:ton tonavtat〈君が教える〉,ton tonavt-samak〈君が私を教える〉。文例:t'ejt'er' lovni kniga.〈少女が・読んでいる・ある本を〉。
執筆者:小泉 保
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
モルドビン語
もるどびんご
Мордовин/Mordovin
ウラル語族のフィン・ウゴル語派に属する言語で、ボルガ川がカザン市で西へ折れるが、その南方にあるロシア連邦内のモルドビン共和国を中心に話されている。言語人口約119万。モルドビン語は、エルジャとモクシャの2方言に分かれ、その差は大きい。音声的に母音が前舌か後舌のいずれかの系列を要求する。名詞は11格に変化し、定と不定の別があり、所有語尾をとる。kudo-so「ある家の中に」、kudo-t´ńe-se「その家の中に」、kudo-sto-n「家・から・私の」。動詞は不定目的をとる主体活用と、定目的をとる対象活用に変化する。mon lovn-an kniga.「私は・読む・本を」(主体活用)、mon tonav-tan.「私は教える(君を)」(対象活用)。名詞も形容詞も動詞と同じように変化する。mon od-an.「私は・若い」。
[小泉 保]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
世界大百科事典(旧版)内のモルドビン語の言及
【ウラル語族】より
…ウラル語族はまず[フィン・ウゴル語派]と[サモエード諸語]に大別される。さらにフィン・ウゴル語派は,バルト・フィン諸語Balto‐Finnic([フィンランド語],カレリア語,エストニア語,ボート語ほか)やモルドビン語,チェレミス語(マリ語),ボチャーク語(ウドムルト語),ジリャン語(コミ語)などを含むフィン語派Finnicと,[ハンガリー語],ボグル語(マンシ語),オスチャーク語(ハンティ語)などを含むウゴル語派Ugrianに区分される(図)。これら言語の間には基本的語彙に厳密な音韻の対応が見られる。…
※「モルドビン語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」