改訂新版 世界大百科事典 「チチャ」の意味・わかりやすい解説
チチャ
chicha
中南米で飲用するトウモロコシの酒。現在もっとも普及しているアンデス高地の場合,(1)十分水に浸したトウモロコシを草や布に包んで数日間放置して発芽させ,(2)できたもやしを天日で乾燥し,(3)石臼でつぶして粉にし,(4)多量の水を加えて長時間煮たて,(5)布ごしした液を酒がめに入れて発酵させると,数日後にアルコール分の少ない甘酸っぱい濁酒ができる。トウモロコシをかんで唾液と混ぜてつくる方法もあったが,現在はほとんど行われない。チチャは祭りや共同労働の機会に大量に飲み,大地や山の精霊へのささげ物としても欠かせない。オビエドの記録から判断すると,チチャは本来クエバ(現,パナマ領)の原住民が飲用したトウモロコシ酒の名称であった。スペイン人は異なる地域のトウモロコシ酒,さらには別の原料による同類の酒を記述する一般名称として用いるようになり,今日にいたっている。アンデス高地のケチュア語ではアハaqaという。
執筆者:友枝 啓泰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報