テオーリアー(読み)ておーりあー(その他表記)theōriā ギリシア語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「テオーリアー」の意味・わかりやすい解説

テオーリアー
ておーりあー
theōriā ギリシア語
contemplatio ラテン語

観照、観想。プラークシス(実践、行動の意。ギリシア語でprāxis、ラテン語でactio)に対する語。「見ること、眺めること」を意味する動詞テオーレインtheōreinから派生する名詞事物を直接の快楽のために享受したり、他の目的のために利用するのではなく、事物から身を離し、事物それ自体がどうなっているのかという、事物の性状、存在に目を向け、これを知ろうとした古代ギリシア人の態度をいう。この態度によって、古代バビロニアの暦法は天文学に、古代エジプトの測量術幾何学となり、古代ギリシアにおける科学と哲学が生まれたという。アリストテレスは人間の生活の型を目的によって三つに分け、快楽を目的とする享楽的生活、行動による名誉を目的とする政治的生活、観照を目的とする観照的生活の3種とし、第3のものがもっとも優れているとした。ヨーロッパ中世では地上のものを離れて神そのものに心を向け、神の意図に完全に一致しようとする祈祷(きとう)の生活が観想的生活vita contemplativa(ラテン語)とよばれ、修道院生活の理想とされた。

[加藤信朗]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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