祈祷には大きく分けて二つの意味領域がある。もしそれを広義に解釈するなら、祈願、祈念などとともに祈りという宗教行動のなかに包摂される。祈りとしての祈祷はあらゆる宗教に基本的な行為である。この場合キリスト教修道院における祈りから、路傍の石の地蔵に捧(ささ)げられる庶民の祈りまでをさすのである。それに対して狭義の祈祷の場合には、わが国では加持(かじ)祈祷といった合成語でしばしば表現されるように、おもに密教修行者や修験者(しゅげんじゃ)などが、修行によって得たと信じられる法力によって信者のさまざまな欲求を実現しようとする行為をさす。この種の加持祈祷は、人間の日々の身近なことに関連して行われるのが特徴である。健康祈願から始まって病気平癒、好ましい方角・方位や日時、さらには作物の豊作祈願、雨乞(あまご)いなどさまざまである。他方、こうした祈祷・祈願は、修験者のような職業的宗教者に依頼しなくとも、一般人の宗教行為を通して成就しようとするときもある。お百度参りとか断(た)ち物などがそれである。
[星野英紀]
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