化学辞典 第2版 「テトラオキソレニウム酸」の解説
テトラオキソレニウム酸(塩)
テトラオキソレニウムサンエン
tetraoxorhenic(Ⅶ) acid, tetraoxorhenic(Ⅵ) acid(tetraoxorhenate(1-), tetraoxorhenate(2-))
【Ⅰ】テトラオキソレニウム(Ⅶ)酸:HReO4(251.21).IUPAC命名法(2005年)による水素方式名称はテトラオキシドレニウム(Ⅶ)酸水素(hydrogen,tetraoxidorhenate(Ⅶ)).通称,過レニウム酸またはメタ過レニウム酸とよばれ,強い酸である.水溶液中ではH3ReO5(メソ酸),H5ReO6(オルト酸)も共存している.Re2O7に計算量の水を加えると得られる.濃縮しうるが純粋なものは得られず,水溶液を加熱するとRe2O7となる.HIで還元するとH2ReO4に,またSnCl2やTiCl3などで還元するとReCl4となる.塩はアルカリ金属,およびほかの金属の塩も得られている.HReO4に各金属の酸化物または水酸化物を反応させるか,こうして得られたBa塩に金属硫酸塩を反応させてつくる.塩はイオン結晶.ReO4-はほぼ正四面体型である.K塩は無色の正方晶系結晶.Re-O1.73 Å.高真空中で加熱すると昇華するが,常圧では融点555 ℃.加圧下では1370 ℃ で沸騰する.Na塩も無色の正方晶系結晶.Re-O1.9 Å.融点約300 ℃.[CAS 13768-11-1:HReO4][CAS 10466-65-6:K塩][CAS 13472-33-8:Na塩]【Ⅱ】テトラオキソレニウム(Ⅵ)酸:H2ReO4(252.22).IUPAC命名法(2005年)による水素方式名称はテトラオキシドレニウム(Ⅵ)酸二水素(dihydrogen,tetraoxidorhenate(Ⅵ)).通称,レニウム酸で,酸,塩ともに不安定である.酸は,Re,ReS2などを硝酸に溶かした黄色液に含まれる.不安定で水溶液中で不均化して,ReⅦ O4-とReⅣ O2になりやすく,純粋なものは得られていない.アルカリ金属などの塩は得られている.たとえば,過レニウム酸塩と酸化レニウムをアルカリ溶融すると得られる.アルカリ金属塩は緑色で水に可溶である.不安定で,水溶液中では酸と同じく ReⅦと ReⅣに不均化する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報