改訂新版 世界大百科事典 「酸化レニウム」の意味・わかりやすい解説
酸化レニウム (さんかレニウム)
rhenium oxide
酸化数Ⅳ,Ⅴ,Ⅵ,Ⅶのレニウムの酸化物が知られている。酸化数Ⅰ,Ⅱ,Ⅲのレニウムの酸化物は無水和物としては得られていない。
酸化レニウム(Ⅳ)
化学式ReO2。レニウムと酸化レニウム(Ⅶ)の混合物を石英管中で600℃以上で長時間加熱すると得られる。暗褐色粉末。比重11.4(25℃)。高真空中で1000℃に加熱するとレニウムと酸化レニウム(Ⅶ)とになる。水素により800℃で還元されてレニウムになる。酸素と加熱すると容易に酸化されて酸化レニウム(Ⅶ)を生ずる。窒素中で水酸化ナトリウムと融解すると,亜レニウム酸ナトリウムNa2ReO3を生じ,長時間融解するとレニウムと過レニウム酸ナトリウムNaReO4とになる。水および弱酸に不溶。濃ハロゲン化水素酸に容易に溶けて相当するヘキサハロゲノレニウム(Ⅳ)酸を生ずる。過酸化水素,硝酸,塩素水などにより過レニウム酸を生ずる。結晶はMoO2と同じくひずんだルチル型構造を有し,Re-Re相互作用が存在すると考えられている。
酸化レニウム(Ⅴ)
化学式Re2O5。過レニウム酸塩を硫酸酸性溶液中で電解還元すると得られるといわれているが,よく調べられていない。青色化合物で200℃以上で分解する。
酸化レニウム(Ⅵ)
化学式ReO3。酸化レニウム(Ⅶ)とジオキサンとの付加化合物をつくり,これを熱分解するか,酸化レニウム(Ⅶ)を一酸化炭素で還元すると得られる。金属光沢をもつ赤色結晶。立方晶系。格子はAB3型化合物の代表的構造で,酸化レニウム型構造と呼ばれている。比重6.9。水と反応せず,空気中で安定。真空中で加熱すると不均化して酸化レニウム(Ⅶ)と酸化レニウム(Ⅳ)とになる。濃アルカリと熱すると過レニウム酸塩と酸化レニウム(Ⅳ)とになる。濃硝酸により過レニウム酸になる。製法により青色の酸化物が得られることがあるが,性質は赤色のものと同じで,色の相違は粒子の大きさによるといわれている。
酸化レニウム(Ⅶ)
化学式Re2O7。レニウムを酸素中で150℃以上に加熱すると得られる。黄色六辺形板状晶。比重6.2,融点301.5℃(封管,酸素中),沸点362.4℃(外挿値)。150℃で昇華が始まる。気体は無色で単分子から成る。真空中で加熱すると約200℃で酸化レニウム(Ⅵ)と酸素とになる。水素と熱すると約300℃で酸化レニウム(Ⅳ)に,800℃でレニウムに還元される。きわめて吸湿性に富み,水に溶けて強酸の過レニウム酸になる。アルコール,アセトンに易溶,エーテル,四塩化炭素に難溶。製法により白色変態が得られ,これは150℃で黄色変態に変わる。
執筆者:近藤 幸夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報