日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルカリ」の意味・わかりやすい解説
アルカリ
あるかり
alkali
水酸化物の形式の化合物で、水に溶解する物質の総称。きわめて古い時代、アラビア人は植物の灰(陸の植物では主成分が炭酸カリウム、海の植物では主成分が炭酸ナトリウム)をアルカリとよんでいた。alは冠詞で、kaliは灰の意である。これがその後に一般化され、灰から抽出した物質、およびそれに似た性質、すなわち強い塩基性を示すものをすべてアルカリとよぶようになった。現在では主としてアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物で水に溶けるものをさすことが多い。さらに広い意味で、これらのほかにナトリウムやカリウムの炭酸塩、リン酸塩、アンモニア、アミンなどを含めていうこともある。水酸化ナトリウム(カ性ソーダ)NaOH、水酸化カリウム(カ性カリ)KOH、炭酸ナトリウム(洗濯ソーダ)Na2CO3・10H2Oなどがその例である。
[中原勝儼]
アルカリ性とアルカリ性反応
アルカリのもつ性質をアルカリ性という。水溶液が灰汁(あく)のような味をもち、せっけん水のように油脂類を洗浄し、赤色リトマスを青色に変え、水素イオン濃度(pH)7以上で酸を中和する。この語はもともと水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどの強い塩基の性質を示すことばとして用いられてきたが、現在ではさらに広くなって塩基性と同じ意味で用いられている。アルカリ性をもつものの示す反応をアルカリ性反応ということがある。たとえば、色素の色を変えたり、水溶液中から不溶性の金属水酸化物を沈殿させたりするなどがその例である。
また一般にアルカリ性を示すものを、分類名として「アルカリ――」とよぶことがある(たとえばアルカリ性を示す鉱泉をアルカリ性泉という)が、かならずしもそうではない場合もある。たとえばアルカリ性食品というときは、食品自体がアルカリ性を示すのではなく、その成分のうちの無機質の組成がアルカリ性、すなわちナトリウム、カリウム、カルシウムなど水酸化物となってアルカリ性を示す成分が、塩素、リン、硫黄など酸性をなす成分に比べてモル比で多いような食品をいう。このときのアルカリ性の程度をアルカリ度といい、アルカリ度の高いものをアルカリ性食品、その逆を酸性食品といっている。
[中原勝儼]
『岡部泰二郎著『無機プロセス化学』(1993・丸善)』▽『高本進・稲本直樹・中原勝儼・山崎昶編『化合物の辞典』(1997/普及版・2010・朝倉書店)』